「バーニン」は英国アイランドから発表されたザ・ウェイラーズのセカンド・アルバムです。日本盤はボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ名義になっていますが、ここまでは名実ともにザ・ウェイラーズのアルバムに間違いありません。

 ウェイラーズはもともとボブ・マーリー、ピーター・トッシュ、バニー・ウェイラーのボーカル・トリオで、それが最強のリズム・コンビのバレット兄弟と合体して5人組となり、本作ではさらにジャマイカでは天才と評判だったキーボードのアール・リンドが加わりました。
 
 前作「キャッチ・ア・ファイアー」はチャート・アクションこそ芳しくなかったものの、次の作品を出すほどには評判は良かったようです。ウェイラーズはアルバム発売に合わせて英国をツアーし、テレビ出演も果たしています。これが結構なインパクトを与えたようです。

 ニューヨークではブルース・スプリングスティーンのサポートをするなど着々と彼らの名前は米国にも浸透していきます。そこで前作から半年という短いインターバルで本作「バーニン」が発表されるに至りました。ジャマイカでのキャリアが長いので曲はたくさんありました。

 本作にはマーリーの代表曲「アイ・ショット・ザ・シェリフ」が収録されています。アルバム発表の翌年にエリック・クラプトンがこの曲をカバーし、それが全米1位の大ヒットになってしまいます。この革命的な出来事がレゲエの認知度を一気に高めました。

 日本の片田舎の高校生だった私もこの曲で初めてボブ・マーリーの名前を耳にしました。しばしば原曲もラジオから流れてきたので、レゲエなるものに触れるきっかけとなりました。その次にレゲエのことを頻繁に耳にするのは数年後のパンクの時代でした。

 この曲以上にボブ・マーリーとウェイラーズにとって重要な曲は「ゲット・アップ・スタンド・アップ」でしょう。民衆の蜂起を促す不朽の名曲は、市民のプロテストが行われるところにはどこにでも使われて人々を鼓舞し続けています。

 マーリーとトッシュがハイチをツアーしている時に共作したそうです。ハイチは中南米最初の独立国ながら最も貧しい国でもあります。その厳しい現状を目の当たりにした二人のメッセージが込められています。のちにトッシュとウェイラーのソロにも収録されました。

 さらには「バーニン・アンド・ルーティン」。アルバム・タイトルの元ともなった曲も厳しい社会の現実に対する懸念が強く表明されています。こうした切実な主張が込められた曲が三人のボーカル・ワークで表現されていきます。

 サウンドは前作のようなロック仕様のサウンドが追加されたわけではありませんが、その結果を先取りしたようなサウンドになっています。要するにほんの少しロック耳に寄り添ったレゲエになっています。ベースもまろやかですし、ギターもリズムだけではありません。

 ウェイラーズの過去の楽曲からの新録も多く、彼らの長いキャリアを総括して、ロック的な府レイバーをまぶしてまとめた作品と言えます。真摯な主張をマイルドなレゲエ・サウンドにのせて歌い上げるスタイルはとても新鮮でした。

Burnin' / The Wailers (1973 Island)