RNAオーガニズムの「RNAOミーツPOPO」です。です、って言われても困るでしょうが、私はこのアルバムをリアルタイムで買ってかなり聴いていたのでとても感慨深いです。ただし、「正体不明のオルターネティヴ・バンド遂に登場!」ですから正体は不明です。

 後にEP-4して活躍する佐藤薫がプロデュースした最初のグループだと聞かされて、なるほどと納得しました。しかし、佐藤自身が演奏しているのか何なのかは未だによく分かりません。メンバーはアルバムの表記だと0123とチャンス、ゼロの三人です。

 このうち0123とゼロは山崎春美の「タコ」にボーカルで参加していますから、どうやら実在の人物のようです。再発元のきょうレコーズのサイトによれば、彼らはロック・マガジン主催のイベント「ニュー・ピクニック・タイム」に髪を緑に染めた観客として人前に現れたそうです。

 もともとロック・マガジンにロンドンからカセットテープを送ってきたのだそうで、阿木編集長は外国のバンドだと思って賞賛していたとの情報もあります。後の佐藤によるEP-4のゲリラ戦略のはしりをここに見ることは難しくありません。

 アルバムのジャケットがまず素晴らしいです。このデザインはレタリング・シートそのまま使用したものです。一つ一つのアイテムを転写して使うシートそのものにデザイン性を見いだした感性には感心のあまりため息が出てしまいます。

 ここでのサウンドは、「リズムボックス、ギター、シンセ、ヴォイスに様々なガジェットを用いたスーパーチープなオルタナ・ダブ」と紹介されています。ここに形容を少し足すとするとファンクでしょうか。ファンキーでミニマルなダブと言えば分かりやすいでしょう。

 海外のサイトでXTCのアンディ・パートリッジの問題作「テイク・アウェイ」をより重くしたバージョンという表現があって、なるほどうまいことを言う人がいるものだと思いました。そのサイトによればRNAオーガニズムはEP-4と名前を変えますが、二つは同じなのでしょうか?

 他のアーティストを引き合いに出すのであれば、私はキャバレー・ヴォルテールを真っ先に挙げたいと思います。チープなリズム・ボックスを始めとする音の響きはキャボスそのものです。真面目なインダストリアル・ダブ・ミュージック仲間です。

 アルバムの中ではやはりジェイムズ・ブラウンの「セイ・イット・ラウド・アイム・ブラック・アンド・アイム・プラウド」を下敷きにして、「ブラック」を「ディレッタント」に変えた曲が目立ちます。B面の大半を費やすクールなファンキー・サウンドはRNAOの真骨頂です。

 続く最後の曲「マトリックス」はLPでは確か終わりがループになっていたように記憶していますがどうでしょう。クールからさらにクールダウンするかのような構成が素晴らしいです。A面も曲の数が多いだけに多彩なサウンドが登場して興奮します。

 私は今でもこの作品が大好きです。ハウスやテクノ以前の作品ですけれども、後のクラブ・ミュージックに通じるリズム感覚と建築されたようなサウンドには心奪われます。手放したことを激しく後悔したアルバムの一つなので、再発されて本当に嬉しいです。

参照:Commercial Records 

R.N.A.O meets P.O.P.O. / RNA Organism (1980 Vanity)