あいみょんは2015年3月に19歳でインディーズデビューしています。デビュー曲は「貴方解剖純愛歌~死ね~」で、その2か月後には早くもミニアルバムを発表しています。この「tamago」がそれです。初の全国流通盤ではありますが、これも一応インディーズです。

 デビュー曲は♪死ね♪という歌詞が災いして、多くのテレビ・ラジオ局ではオンエアが自粛されてしまいましたが、あいみょんによれば、♪死ね♪が「たまたま『ねぇ』っていう言葉と語呂が合っただけなんです」と屈託がありません。

 かわいらしく♪死ね~♪と歌っていても自粛されちゃうんですね。この曲は本当に貴方の♪両腕を切り落とし♪たり、♪心臓をえぐりとっ♪たりするのでそちらの猟奇性も問題になったのかもしれません。カワイイ歌詞だと思うんですけど、世間はうるさいものです。

 ただし、彼女自身の家庭は「『死ね』って言っちゃダメな家なんですよ」と、普通の家庭だそうで、「初めて歌った時は、『死ねぇぇぇ~~~』とかって声がブルブルブル~って震えちゃってたんですよ」と語っています。たまたま入れたという話を裏付ける逸話です。

 その「貴方解剖純愛歌~死ね~」を含む全8曲の「隅から隅まで楽しめるアルバム」です。「めっちゃ楽しみながら制作を進めてきました」ことが、「アルバムを通して伝われば嬉しいな、と」いうことです。確かに伝わってきます。本当に楽しそうです。

 あいみょんは歌詞を重視するタイプのアーティストです。ただし、「自分の気持ちを書いた曲」というわけではなく、「みなさんの想い出や気持ちを歌っているという感覚」なので、私小説的ではありません。そのワンクッションが彼女の歌詞をリアルにしています。

 ♪将来の夢はお嫁さん♪という「○○ちゃん」は整形した友だちを歌ったのだそうですが、自分のことではないなというのは歌詞を聴けばよく分かります。決して突き放しているわけではないのですが、面白がって観察している感じがいいです。

 歌詞の点では「ナウなヤングにバカウケするのは当たり前だのクラッ歌」に触れないわけにはいきません。死語を連打して年寄りを揶揄しているのかと思えば、♪古きよき言葉たち♪と持ち上げてくれて嬉しいです。気にかけてくれるだけで嬉しいというところでしょうか。

 あいみょんの歌は歌詞が話題になりますが、それを支えるポップな曲づくりもすでに達者です。本人は歌謡曲と言っていますが、むしろフォーク、ニュー・ミュージック的な感触で、老若男女の耳に優しい。彼女はインタビューで河島英五と浜田省吾の名前を上げています。

 そうした曲でもって「普段言えないようなことを代弁して、みんなに聴かせる」のがあいみょんの役割だと本人は語っています。もうこの時点で完成しているあいみょんですから、後のブレイクは当然だったのだと今になって思います。

 寿司割烹小松のタマゴをジャケットに据えたセンスは光っています。ブックレットの写真はあいみょん自身によるものだそうで、ビジュアル面での才能もすぐれたものがあることが分かります。手放しで絶賛したいミニアルバムです。

参照:BARKS インタビュー2015/3/3 Ryoko Sakai

Tamago / Aimyong (2015 Lastrum)