倉木麻衣もデビューして20周年、本作品は彼女の「20周年YEAR記念オリジナルアルバム」です。彼女は20年の間、コンスタントに活動を続けていて、ずっと第一線にいますから大したものです。コナンのギネスもそうでないと達成できません。

 今回は記念盤ということで、初回限定盤は5種類も制作されました。豪勢です。ただし、ジャケットが色違いなだけで、中身は同じとなっていて、全種類を揃えなくとも済むという良心的な企画になっています。通常盤にあってこちらにない曲があるのは残念ですが。

 初回限定盤所収のボーナスCDにはZARDの「負けないで」のカバーが収録されました。倉木麻衣とZARDには共通項が多いと感じている人は多いと思いますから、ようやく気づいてくれたかと嬉しくなってしまいます。もちろんいい感じのカバーになっています。

 今回のアルバムは「いろいろなタイプの曲を楽しんでいただけるんじゃないかなって」と本人が語っている通り、これまで以上にさまざまなジャンルの楽曲が収められています。「音楽は自由だと思うんですよね」の言葉通り、自由度が高いです。

 前作での「渡月橋」が和テイストを取り入れて倉木麻衣の再評価につながりました。本作のコナン・タイアップのシングル曲「きみと恋のままで終われない いつも夢のままじゃいられない」には♪清水寺♪が歌詞に出てきて、和テイストの名残が見られます。

 しかし、この路線に安住しないのが倉木麻衣です。今回は作家陣がいつになく多彩です。前作にも参加していたトラック・プロデューサーは徳永暁人と中村泰輔のみです。ただし、二人はコナン・タイアップのシングル曲2曲とCMソングを作っています。信頼度高し。

 その他のプロデューサーの中で注目されるのはもちろんフェルナンド・ガリベイ、レディー・ガガの楽曲を数多く手掛けるプロデューサーです。彼が参加しているのは「ボディ・トーキング」という曲で、さすがに米国ポップ界の先端をいくサウンドです。

 「洋楽テイストなんだけど、どこか日本の歌謡曲のような雰囲気もあって。歌のレンジもいままでにない感じだったし、ぜひトライしてみたいなと」と言う通りの曲で、印象的なリズムに倉木麻衣の♪ボディ・トーキング♪のコーラスが素晴らしいです。

 イル・ディーヴォとの仕事で知られるスウェーデンのプロダクション・デュオ、クイズ&ラロッシは乾いたギターの軽快な「キャント・ストップ・マイ・フィーリング」、グルーヴィーな「ウィッシング・オン・ア」は宇多田ヒカルをカバーして話題のベンブリックが手掛けました。

 もう一曲アイルランド・オーストラリア・コンビの曲もあり、日本からも気鋭のHワンダーが起用されています。サウンド面ではかなりの意欲作であることが布陣からも分かるというものです。ステージで再現されることが楽しみです。

 メッセージは「薔薇色の人生」です。彼女は20年間まるでぶれずに前を向いて歩いています。歌詞の内容も基本的には同じです。冒険はしつつも、基本的にはとても安定しています。このぶれない安定感が逆に極めて新鮮です。

参照:MIKIKI インタビュー (森朋之) 

Let's Goal / Mai Kuraki (2019 Being)