BiSHの新アルバムがまだメジャー3枚目であることに驚きを隠せません。自分がツイッターやら雑誌やらでフォローしているからであることは分かっているのですが、前作以降の彼女たちの密度の濃い活動を追っていると、アルバムがまだ3枚目というのは意外な気がします。

 そもそも前作からここまで1年半の間にシングルが4曲発表されていますし、セントチヒロ・チッチとアイナ・ジ・エンドのソロ・シングル、アユニDを中心とするバンド、ペドロのミニ・アルバムの発表もありました。派手に活動していたわけです。

 さらに本作品のプロモーションは凄かった。4月には「スティックス」、5月には「キャロッツ」が配信限定で発表され、アルバム自体も6月に299円で先行販売されました。私も秋葉原のタワーレコードに走りましたが、売り切れで入手できませんでした。

 しかし、この先行アルバムは音楽担当の松隈ケンタとWACKの責任者渡辺淳之介のユニットによるフェイク盤だったことが判明します。売り切れててよかった。結局、本作品は7月にリリースされました。「スティックス」と「キャロッツ」に6曲の新曲入りです。

 そしてWACKらしい丁寧なファンに優しい仕様で、ボーナスCDが付いており、ここに前作からこっちのシングルがすべて収録されています。♪おっぱいなめてろ ○○○しこってろ♪もこうして聴けることになりました。ありがたいことです。

 本作品も1曲目が凄いです。「DiSTANCE」はエモーショナルなBiSHらしい名曲です。アイナとチッチの二人に加えて、進境著しいアユニのボーカル、さらにこの曲ではハシヤスメ・アツコまで覚醒してサビを歌っています。BiSH恐るべしです。

 音楽はいつものように松隈ケンタが手掛けています。彼が率いるスクランブルズがサウンド担当なわけですが、面白いことに松隈はサウンドが出来てから曲を考えるのだそうです。そんなやり方があるのかと大そう新鮮に思いました。

 スクランブルズのメンバーそれぞれがリードをとって各楽曲のサウンドを仕上げていくのかなと思います。恐らくはそのために曲調にバラエティーが生じるのでしょうね。デス・メタルのような「遂に死」だったり、まるでエビ中の曲のようなさわやかな「アイ・アム・ミー」だったり。

 作詞の方はアイナとチッチ、リンリンが1曲ずつ、文学担当のモモコグミカンパニーが2曲とちょっと少ないです。人参と鞭というコンセプトを先に設定したためでしょうか。アイナの曲に♪目を合わせるということ♪とモモコの本の題名が出てくるのはポイント高いです。

 「楽器を持たないパンク・バンド」の面目躍如たる部分と青春爽やかアイドルの両面をすっきり表現していて素敵です。全員がボーカリストとして実力をつけてきていて、キャラクターもしっかりと立ってきたので、もはやこのメンバー以外考えられなくなりました。凄いことです。

 サウンドはナイン・インチ・ネイルやマリリン・マンソンの頃の洋楽のテイストが濃厚で、これが何とも嬉しいところです。BiSHはどんどん大きくなっていきますが、サウンドの冒険はますます過激になってきています。やっぱり凄いアイドルです。

Carrots And Sticks / BiSH (2019 Avex Trax)