パーラメントの約38年ぶりの新作です。2014年にはファンカデリックの33年ぶりの新作がありました。Pファンクの総帥ジョージ・クリントンは決して30年以上もさぼっていたわけではなく、精力的な活躍をしていましたから、この30数年ぶりは意味深です。

 というのもジョージは2019年をもってツアーから引退することを発表しています。音楽活動から身を引くわけではなさそうですが、ここで一つファンカデリックとパーラメントにけりをつけておこうと考えてのことではないでしょうか。

 ファンカデリックの新作が3枚組であったことを考えると、2枚組でも短いと言えば短い。しかし、前者が過去の録音に手を加えた楽曲も含む作品だったことを思えば、一部ゲイリー・シャイダーの声なども重ねているものの、基本的にオール新録の本作の充実ぶりが分かります。

 ジョージ御大を支えて、本作の中心的な役割を担っているのはジョージの家族たちです。まずは息子トレイシー・「トレイリュード」・ルイス・クリントン、そして孫のトレイシー・「トレイゼイ」・ルイス・クリントンです。同じ名前なのでややこしいです。

 そして孫娘のパタヴィアン・ルイスとトニーシャ・ネルソン。二人のボーカルがとにかく大活躍しています。素晴らしいお爺ちゃんじゃないですか。もはや封入ブックレットの集合写真はクリントン一族の家族写真のようになっています。Pファンク恐るべしです。

 パーラメント名義となっているだけに、お馴染みのメンバーも参加しています。まずはギターのブラックバード・マクナイト、トロンボーンのフレッド・ウェズリー、惜しくも2017年に亡くなってしまったウォルター・ジューニー・モリソン、そしてゲイリー・マッドボーン・クーパー。

 Pファンク組としては今や一番活躍しているデトロイトの顔役アンプ・フィドラーも顔を見せています。こうしたベテラン勢に加えて、もちろん新しい血がどんどんフィーチャーされています。曲のタイトルにクレジットされているのはスカーフェイス。史上最高のMCの一人です。

 その他にも若くはありませんが「ディープリー・ディッピー」で有名なライト・セド・フレッドのマンゾーリ兄弟、ザ・バットレス、スレイヴのスティーヴ・アーリントン、ドラムのクリス・デイヴなど、今を時めくアーティストもきっちりと登場しています。

 そもそもジョージはケンドリック・ラマーの傑作に参加していますし、フライング・ロータスやサンダーキャットなど、現代のシーンを引っ張る大物と意気投合したと言いますから、60年の音楽生活の終わりが近づいてもまだまだ最前線から遠くはありません。

 本作もパーラメントの名義だけにボーカルが厚く、曲によっては10人を超えるボーカリストが起用されています。なるほどパーラメントだわいと目頭が熱くなります。ただし、サウンドは昔のぐしゃぐしゃな団子のようなサウンドとは異なっています。

 すっきりと現代風にソリッドな音作りになっており、2018年現在の音楽シーンをしっかりと捉えた見事なサウンドです。一言でいえば真面目です。公的医療制度の問題など現代アメリカの病理と対峙すると真面目にならざるをえないのかもしれません。

Medicaid Fraud Dogg / Parliament (2018 C Kunspyruhzy)