70歳を目前に控えたポール・サイモンが攻めてきました。これまではアフリカ、ラテン・アメリカやカリブ海を回っていたポールはこの作品でついにインド亜大陸に進出しました。♪タケタタケタタ~♪。1曲だけですけれども、全体のムードに影響を与えています。
攻めのもう一つはサンプリングの導入です。これまで作曲クレジットに記載される形でのサンプリングの使用はありませんでした。それがここでは3曲も。しかも選曲が渋いです。いずれも戦前のブルースやゴスペルです。渋すぎる。
ポールは古いゴスペルやドゥワップ好きで知られています。彼は、1950年代のドゥー・ワップ、エルビス・プレスリー、チャック・ベリー、バディー・ホリー、ドリフターズといったアーバンなR&Bやロカビリーなど、基本的なロックン・ロールを第一言語としていると語ります。
そこを起点に他の分野を渉猟し、それをまたロックに戻す。いつもゴスペルなりロックなりのベーシックに戻ってくるのだということです。他の分野の振れ幅が尋常じゃなく大きいためにベーシックに戻ってもまるで同じに聴こえない。そういうことです。
本作ではこのベーシックぶりが感動を呼びます。インド音楽や西アフリカのコラを取り入れた楽曲もあれば、クラシック的なストリングスを導入した曲もあるのですが、サンプリング三部作のディープなベーシックぶりが頭抜けています。やはり人間、ベーシックは強いです。
冒頭の「ゲッティング・レディー・フォー・クリスマス」では1941年に録音されたゲイツ牧師の説法が取り入れられています。ガチャガチャなるイントロに導かれて、この一曲でハートをつかまれること間違いありません。
「ラヴ・イズ・エターナル・セイクリッド・ライト」ではジミー・ロジャースの「トレイン・ウィッスル・ブルース」、「ラヴ&ブレッシングス」では「ゴールデン・ゲイト・ゴスペル・トレイン」とこれも戦前のサウンドです。これに触発されたポールはとても楽しげです。
ポールは前作にてブライアン・イーノと組んで、ポール的には新たなサウンドを構築しましたけれども、こうして自身の言うところの第一言語をしゃべっている姿はやはり素直に素晴らしいです。やっぱり自分はこれなんだと饒舌に語りかけてきます。
インド音楽も良いのですが、装飾に過ぎないとも言えるわけで、内側からにじみ出てくる言葉にはとてもかないません。もちろん、ハイセンスにサウンドを組み立てているので、聴きどころは多いとは思うのですが。♪タケタタケタタ~♪。
こうしたサウンドをまとめ上げたのは、ポールとの共同プロデューサーに起用されたフィル・ラモーンです。かなり懐かしい顔が復帰しました。前進を続けながら世界を一周して元のところに戻ってきた攻めのサウンドは懐古的なところが微塵もありません。
♪誰が天使を信じているんだ・・・僕だよ♪、70歳にして達した境地は歌詞にも表れる充実ぶりで、本作品は好評のうちに迎えられました。やはりイーノと組むよりは過去のルーツと組む方がしっくりくるとポールが判断したのでしょう。ポールの集大成です。
So Beautiful Or So What / Paul Simon (2011 Here Music)
攻めのもう一つはサンプリングの導入です。これまで作曲クレジットに記載される形でのサンプリングの使用はありませんでした。それがここでは3曲も。しかも選曲が渋いです。いずれも戦前のブルースやゴスペルです。渋すぎる。
ポールは古いゴスペルやドゥワップ好きで知られています。彼は、1950年代のドゥー・ワップ、エルビス・プレスリー、チャック・ベリー、バディー・ホリー、ドリフターズといったアーバンなR&Bやロカビリーなど、基本的なロックン・ロールを第一言語としていると語ります。
そこを起点に他の分野を渉猟し、それをまたロックに戻す。いつもゴスペルなりロックなりのベーシックに戻ってくるのだということです。他の分野の振れ幅が尋常じゃなく大きいためにベーシックに戻ってもまるで同じに聴こえない。そういうことです。
本作ではこのベーシックぶりが感動を呼びます。インド音楽や西アフリカのコラを取り入れた楽曲もあれば、クラシック的なストリングスを導入した曲もあるのですが、サンプリング三部作のディープなベーシックぶりが頭抜けています。やはり人間、ベーシックは強いです。
冒頭の「ゲッティング・レディー・フォー・クリスマス」では1941年に録音されたゲイツ牧師の説法が取り入れられています。ガチャガチャなるイントロに導かれて、この一曲でハートをつかまれること間違いありません。
「ラヴ・イズ・エターナル・セイクリッド・ライト」ではジミー・ロジャースの「トレイン・ウィッスル・ブルース」、「ラヴ&ブレッシングス」では「ゴールデン・ゲイト・ゴスペル・トレイン」とこれも戦前のサウンドです。これに触発されたポールはとても楽しげです。
ポールは前作にてブライアン・イーノと組んで、ポール的には新たなサウンドを構築しましたけれども、こうして自身の言うところの第一言語をしゃべっている姿はやはり素直に素晴らしいです。やっぱり自分はこれなんだと饒舌に語りかけてきます。
インド音楽も良いのですが、装飾に過ぎないとも言えるわけで、内側からにじみ出てくる言葉にはとてもかないません。もちろん、ハイセンスにサウンドを組み立てているので、聴きどころは多いとは思うのですが。♪タケタタケタタ~♪。
こうしたサウンドをまとめ上げたのは、ポールとの共同プロデューサーに起用されたフィル・ラモーンです。かなり懐かしい顔が復帰しました。前進を続けながら世界を一周して元のところに戻ってきた攻めのサウンドは懐古的なところが微塵もありません。
♪誰が天使を信じているんだ・・・僕だよ♪、70歳にして達した境地は歌詞にも表れる充実ぶりで、本作品は好評のうちに迎えられました。やはりイーノと組むよりは過去のルーツと組む方がしっくりくるとポールが判断したのでしょう。ポールの集大成です。
So Beautiful Or So What / Paul Simon (2011 Here Music)