マーヴィン・ゲイの覚醒後の傑作シリーズ第二弾です。「ホワッツ・ゴーイン・オン」から2年、勝るとも劣らない傑作コンセプト・アルバムが誕生しました。今回のテーマはずばりSEX、前作が社会派だったことを思うと急激な路線変更にも思えます。
前作はとりわけA面がノン・ストップとなっているなど、いかにもコンセプト・アルバムらしい仕様になっていたのに対し、本作は一見以前のモータウン・スタイルに戻って、それぞれの楽曲が独立していますし、必ずしも関連があるようにも思えません。
しかし、それぞれのテーマは性愛に関わるあれこれですし、何よりも見開きジャケットの内側にはマーヴィン自身が性と愛についてのステートメントを掲載していますから、これは紛れもないコンセプト・アルバムだということが出来ます。
それによれば「SEXはSEX、愛は愛」と何やら勇ましいことが書かれているのですが、アルバム収録曲は「ひとりにしないで」とか「淋しい祈り」だとか「別離のささやき」など、タイトルからして情けないです。女たらしのマーヴィンの魅力はその情けないところなのでしょう。
「結局のところ、生殖器は偉大な人間の体の重要な一部なのだ」という一節が本作のコンセプトを最もよく表現していると思われます。人生の大半はエロいことを考えて生きてきたといいうようなことをみうらじゅんが言っていますが、普遍的な真理でもあるでしょう。
本作品のサウンドは前作とは随分異なり、昔のスタイルに戻ったように感じます。しかし、「ホワッツ・ゴーイン・オン」を経て、アーティストとして作品を自らコントロールできるようになったマーヴィンですから、やはり昔とは違います。
ピーター・バラカン氏は、本作品を聞いて「吹っ飛んだ」そうで、「それからはマーヴィンに溺れたような感じで、何百回も(ちょっとおおげさかな?)聞いたものです」と語っています。ソウル・ミュージックに造詣の深いバラカン氏の言だけに興味深いです。
そのバラカン氏は本作の魅力の一つに「もたった感じのリズム」を上げています。それは「バック・ビートを強調したリズムではなく、パーカッションも多用したポリリズム的な柔らかいビート」です。この表現は私のもやもやを晴らしてくれました。
そうなんです。以前のマーヴィンと本作との一番の違いはそこなんです。何か違うと思いながらもやもやしていたところを見事に言葉にしてくれました。やっぱりリズム。ソウル・ミュージックはリズムが命、古今のソウルの名作はすべてリズムが素敵です。
本作にも参加ミュージシャンが記載されています。注目すべきはクルセイダーズのジョー・サンプルとウィルトン・フェルダーの参加です。しかし、ホーン奏者の記載はありません。研究が進んで、ほとんど判明していますけれども、これはどうしたことなんでしょう。
本作品は前作を上回るヒットを記録し、マーヴィンの最高傑作にあげる人も多いです。アル中リハビリのソングライター、エド・タウンゼントと組んだ傑作は、多くの若者を虜にし、ソウル・ミュージックの表現の幅を広げることに大きく貢献したのでした。
参照:「魂のゆくえ」ピーター・バラカン(アルテス)
Let's Get It On / Marvin Gaye (1973 Tamla)
前作はとりわけA面がノン・ストップとなっているなど、いかにもコンセプト・アルバムらしい仕様になっていたのに対し、本作は一見以前のモータウン・スタイルに戻って、それぞれの楽曲が独立していますし、必ずしも関連があるようにも思えません。
しかし、それぞれのテーマは性愛に関わるあれこれですし、何よりも見開きジャケットの内側にはマーヴィン自身が性と愛についてのステートメントを掲載していますから、これは紛れもないコンセプト・アルバムだということが出来ます。
それによれば「SEXはSEX、愛は愛」と何やら勇ましいことが書かれているのですが、アルバム収録曲は「ひとりにしないで」とか「淋しい祈り」だとか「別離のささやき」など、タイトルからして情けないです。女たらしのマーヴィンの魅力はその情けないところなのでしょう。
「結局のところ、生殖器は偉大な人間の体の重要な一部なのだ」という一節が本作のコンセプトを最もよく表現していると思われます。人生の大半はエロいことを考えて生きてきたといいうようなことをみうらじゅんが言っていますが、普遍的な真理でもあるでしょう。
本作品のサウンドは前作とは随分異なり、昔のスタイルに戻ったように感じます。しかし、「ホワッツ・ゴーイン・オン」を経て、アーティストとして作品を自らコントロールできるようになったマーヴィンですから、やはり昔とは違います。
ピーター・バラカン氏は、本作品を聞いて「吹っ飛んだ」そうで、「それからはマーヴィンに溺れたような感じで、何百回も(ちょっとおおげさかな?)聞いたものです」と語っています。ソウル・ミュージックに造詣の深いバラカン氏の言だけに興味深いです。
そのバラカン氏は本作の魅力の一つに「もたった感じのリズム」を上げています。それは「バック・ビートを強調したリズムではなく、パーカッションも多用したポリリズム的な柔らかいビート」です。この表現は私のもやもやを晴らしてくれました。
そうなんです。以前のマーヴィンと本作との一番の違いはそこなんです。何か違うと思いながらもやもやしていたところを見事に言葉にしてくれました。やっぱりリズム。ソウル・ミュージックはリズムが命、古今のソウルの名作はすべてリズムが素敵です。
本作にも参加ミュージシャンが記載されています。注目すべきはクルセイダーズのジョー・サンプルとウィルトン・フェルダーの参加です。しかし、ホーン奏者の記載はありません。研究が進んで、ほとんど判明していますけれども、これはどうしたことなんでしょう。
本作品は前作を上回るヒットを記録し、マーヴィンの最高傑作にあげる人も多いです。アル中リハビリのソングライター、エド・タウンゼントと組んだ傑作は、多くの若者を虜にし、ソウル・ミュージックの表現の幅を広げることに大きく貢献したのでした。
参照:「魂のゆくえ」ピーター・バラカン(アルテス)
Let's Get It On / Marvin Gaye (1973 Tamla)