超名曲「ノーバディーズ・ダイアリー」を含むヤズーのセカンド・アルバムです。リアルタイムで買ったLPはそれこそ擦り切れるくらいに聴いたものです。印象的なメロディーとアリソン・モイエのソウル全開のボーカルは80年代UKを代表する名曲だと思います。

 ヴィンス・クラークはデペシュ・モードをアルバム一枚で脱退しており、ヤズーでも同様の企みを考えていたようですが、ここまでヒットするとさすがに周りはほっておかない。それにアリソンももう少しは一緒にやりたかったようです。

 というわけでデュオは解散を内包しつつも、前作とは異なり、しっかりとスタジオを確保して、じっくりとアルバムの制作にかかりました。実際、出来上がった作品は格段にまとまりのある土性骨の座ったアルバムになりました。

 特に前作に比べるとリズムが強力になりました。クラークのエレクトロニクスとアリソンのボーカルというパターンは同じですけれども、サウンド一つ一つがしっかりと録音されています。アリソンのボーカルもよりどすが効いています。

 アルバムは全11曲で、アリソンが6曲、クラークが5曲と前作とは曲数が逆転しています。さらに二人の作品が交互に出てくる構成になっていて、その違いが際立っています。当たり前ですが、アリソンの曲はよりソウルっぽく、クラークの曲はポップっぽい。

 この辺りを見てもいかにもデュオには未来がなさそうです。とりわけクラーク作の「ハッピー・ピープル」ではアリソンが唄うことを拒否し、結局クラークがボーカルをとっています。彼が唄っているから余計にそう思うのでしょうが、いかにもアリソン向きではありません。

 しかし、私はこの曲がアルバム中二番目に好きです。ですから、CD化された時に買い直したら米盤だったためにこの曲が「ノーバディーズ・ダイアリー」のB面曲「ステイト・ファーム」に入れ替わっていたのには泣きたくなったものです。

 ちなみに米国では、ヤズー・レコードというレーベルがあったことから、混同を避けるためにユニット名をYAZとしていました。これもややこしい。まだこの頃にはそうした情報が流通していなかったものですから、私などは全く別バンドだと思ってしまっていました。

 前作のペラペラなエレクトロニクスから、よほどしっかりしたサウンドに変化したこと、アリソンのボーカルがよりソウル、R&B寄りになったこと。これをどう考えるかでアルバムの評価が分かれます。前作とは魅力のあり様がかなりの程度変わってしまっています。

 私はどちらも捨てがたいです。何もリニアに発展しなければならないわけではありません。アルバムとして格段のまとまりがあり、完成形に近い本作もアイデア先行のワクワクがとまらない前作も、それぞれが素晴らしいです。

 アリソン・モイエはヤズーの後はソロ歌手としてソウルな喉を響かせて大成功します。ヴィンス・クラークはイレイザーでアバを料理して大ヒットを飛ばします。そういえば彼はサイモンとガーファンクルの大ファンでもありました。よくもそんな二人が一緒にやっていたものです。

You and Me Both / Yazoo (1983 Mute)