暴走列車グランド・ファンク・レイルロードの5作目はその名も「サバイバル」です。ジャケットにはサバイバルをテーマに小芝居をする三人が写っています。ここらあたりのセンスが何とも言えず愛おしい。グランド・ファンクならではです。

 この作品にはCD化された際にボーナス・トラックとして、「カントリー・ロード」、「オール・ユーヴ・ガット・イズ・マネー」、「フィーリン・オールライト」のオリジナル・バージョンが収録されました。素直にこれまでのアルバムの延長線上にあるバージョンです。

 ところが、本編に収録された曲は、随分アレンジがすっきりしました。そうなんです。このアルバムはグランド・ファンクが新境地を獲得した作品です。中村とうよう氏は、「音がフッ切れて、音楽的に筋が通ってきたという感じ」だと表現しています。

 とりわけアルバムのラストを飾る「ギミー・シェルター」では、イントロのギターの音がマーク・ファーナーのこれまでのプレイからは信じられないような繊細な音になっています。これを聴いていると、グランド・ファンクの変化がよく感じられます。

 子どもの話声を使ったり、録音時の録り直しと話し合いをそのまま残したりと、音ばかりではなく形の上でも工夫が感じられます。音楽的な成熟と表現してしまってよいと思われます。まだデビューして日が浅いわけですが、突っ走っていると成熟も早い。

 ジャケット裏にはプロデューサーのテリー・ナイトがグランド・ファンクのライヴの大音量と熱狂ぶりを描写した文章が記載されています。このアルバムを発表した後、彼らは日本にやってきました。特に今は無き後楽園球場でのコンサートは伝説となっています。

 前座が終わった後、雷鳴が轟き、突然の豪雨の中でライブが敢行されたのです。大きな会場は異様に盛り上がったそうです。感電を恐れたバンドは実はテープを流していたそうですが、そんなことは関係ありません。観客には一生忘れられないライブだったことでしょう。

 そのジャケ裏の文章には、ライブ会場で出産騒ぎがあったことが記されています。その兆候に気づいたマークが観客を静かにさせて、出産を支えたというお話です。これまた観客には忘れられない夜になったことでしょう。でも本当でしょうか。

 さて、アルバムからのシングル・カットは2曲、A面B面それぞれの最後に入っていた曲で、トラフィックの「フィーリン・オールライト」とローリング・ストーンズの「ギミー・シェルター」です。どちらもカバー曲です。シングルがカバー曲というのも彼ららしくありません。

 しかし、彼ら自身の曲も悪くはないものの、この2曲が突出しているのも確かです。「グランド・ファンクの演奏力が向上して来ると、彼らの自作曲がマテリアルとして弱く見えてしまう」とのとうよう評にはある程度同意せざるを得ません。

 すっきりしたグランド・ファンクというのも語義矛盾のような気がしてしまいますが、成熟期に入ったら入ったで、ストレートなロックの魅力は別の輝きを持ち始めました。彼らのサバイバルはまだまだ続いていくのでした。

参照:ニュー・ミュージック・マガジン1971年5月号

Survival / Grand Funk Railroad (1971 Capitol)