BiSHのメジャー3枚目となるシングル曲です。自身初となるオリコン週間シングルチャート1位を獲得しました。初の1位とは少々意外でした。それより以前に3枚目のシングルというところにも驚きました。あの「オーケストラ」もシングル・カットされていないんですね。

 BiSHのこれまでのシングル同様、発売形態がいいです。通常盤はCDのみ、通常盤にブルーレイもしくはDVDを加えた2種類、計3種類の発売です。カップリングを変えて何パターンか出されるのが流行りの昨今、こうした形はとてもファンにやさしいと思います。

 それに映像盤の方もMVを収録しただけのものではありません。ここではけやき坂で行われたライブ全6曲を全収録した上に、別曲「スマック・ベイビー・スマック」のMV、そしてメンバーそれぞれの人となりがよく分かる「JAM」の各メンバー・バージョンが収録されています。

 おまけにメイキング映像までとてんこ盛りで、77分間の大盤振る舞いです。ここまでされたらシングルを買おうと思うのも道理だと思いませんか。プロモーターのWACKはアーティストとファンへの愛に溢れていていい仕事しています。気持ちがいいです。

 曲はますます楽器を持たないパンクバンドらしくなってきました。BiSHと言えば、アイナ・ジ・エンドとセントチヒロ・チッチの二人の実力派ボーカリストが看板です。特にアイナの場合は、そのハスキー・ボイスですでにあちこちの他流試合に引っ張りだこです。

 一方のチッチは、BiSHの曲ではその綺麗な声で明らかに中核をになっています。アイナとチッチが絡むさまは鳥肌ものであると言い切ってしまいましょう。二人は音程もリズムも安定しているので、ライブも安心して見ていられます。

 しかし、その安定が時にパンク・バンドとしての期待にそぐわない。そんな時に活躍するのが不安定ボーカルのアユニDとリンリンです。リンリンはシャウト系のボーカルが似合いますし、アユニの場合にはフラフラする鎖鎌ボーカルが脳天に響きます。

 何を言っているかと申しますと、「ペイント・イット・ブラック」はいつにもましてアユニとリンリンが目立っているということです。曲調がメタル寄りのハードコア・パンクなものですから、二人のボーカルがこれ以上なくぴったりと曲に寄り添っています。

 ギターを中心に高速で突っ走るサウンドは、BiSHのサウンドでも一皮むけた印象があります。文句なく名曲です。一方、2曲目はパンクのおふざけ的側面を強調した曲になっていて、やはりBiSHはアイドルなんだということを再確認させてくれます。

 映像では「JAM」の各メンバー・バージョンがいいです。それぞれのヒーローに会いに行く趣向で、アイナは阿部真央、チッチは峯田和伸、モモコグミカンパニーは高橋久美子、ハシヤスメアツコは定食屋のオヤジ、リンリンは新垣里沙、アユニDはブロガーのアルファに会います。

 変などっきりではなく、リスペクトに溢れたそれぞれの出会いが美しい。メンバーそれぞれの素の姿に思わずもらい泣きしてしまいました。みんないい子ばかりです。と油断していると仕掛けてくるのが渡辺淳之介率いるWACKです。気を引き締めて対峙しましょう。

Paint It Black / BiSH (2018 Avex Trax)