♪こなさん、みんばんは♪という高木完(?)のイントロで、一気に40年の時を超えてタイムスリップしてしまいます。曰く言い難い、この言葉のセンス。ここでこれを使うことはクレバーなのかどうなのか。裏の裏の裏のそのまた裏。カッコいいのか何なのか。

 とにかく一発かまされた後は、1980年代初めのプラスチックスの曲を比較的オリジナルに忠実に再現した演奏が最後まで続いていきます。あれから40年近い時が流れ、今ではオリジナル・メンバーの佐久間正英と中西俊夫は他界してしまいました。

 これは中西俊夫が逝去する9か月前に行われた「結成40周年を祝して開催された一夜限りの再結成ステージ」を収録したライブ盤です。日付は2016年5月10日、場所はブルーノート東京です。アルバムは中西の一周忌に発売されました。

 この夜のラインナップは、オリジナル・メンバーの中西俊夫、立花ハジメ、島武実に加えて、亡くなった佐久間正英の場所に中西俊夫バンドでキーボードを担当してきたmomo、そして佐藤チカの代わりに現役トップモデルのリンダdadaの5人です。

 リンダはN’夙川BOYSなるロック・バンドでも活躍していました。その楽曲は映画「モテキ」でも取り上げられています。なるほど。そのリンダの歌は佐藤チカを忠実に再現しているようで、最初に音だけ聴いた時にはチカさんも戻ったのかと思ってしまいました。

 それでいいんでしょうか。プラスチックスは2007年10月にも再結成しています。この時、立花ハジメは佐藤チカに、自分の代わりに若い女の子を入れてやるんだろうと誤解されて随分怒られたと言います。当時は屋敷豪太を入れる再結成だったから許してもらったと。

 ところが今回はもろにチカさんが嫌がった路線での復活です。大丈夫だったんでしょうか。私が心配することでもないのかもしれませんが、リユニオンに直面した年季の入ったファンの皆様を代表して心配してみました。

 サウンドはオリジナルにかなり忠実ですけれども、如何せん40年の時がたっていますから、機材の進歩からは逃れようがありません。ピコピコ・リズムもチープではなくなっていますし、全体にとにかく音がクリアで奥行きがあります。

 しかも中西も立花も音楽活動が続いていますからどうしても上手さは隠せません。要するにパワーアップしています。ただし、島さんだけは昔と変わらず、昔は突っ立っていましたけれども、歳のせいでしょう、今ではリズムボックスの前に座っています。

 パワーアップしたらしたで、ハイセンスな楽曲が輝いています。やはり時代の先を走っていたのだなあとしみじみと感慨深いです。そのメッセージもたとえば「トゥー・マッチ・インフォーメイション」はフェイスブック、ツイッター、ラインを歌詞に取り入れてまるで違和感がない。

 ライヴ・ミックスを手掛けたのは久保田麻琴です。中西のフェイスブックの記事を借りれば「かくもソリッドなR&Rに結実していることが感動的です」。冒頭の一発を除けば、サウンドは十分に今を生きています。さすがに世界のプラスチックスです。凄いバンドでした。

A / Plastics (2018 ビクター)

Youtube には音源が見当たりません。悪しからず。