サイボーグとは「デューン:砂の惑星」シリーズで有名なフランク・ハーバートの本格的なSF小説から引用した語句だとクラウス・シュルツェは説明しています。人間と機械との合体ということからすると、クラウスが作品タイトルとすることには違和感がありません。

 それにこのジャケット。後にブレイン・レーベルから再発売された際には、またまたダリ風の絵に差し替えられていますが、この何ということのない写真ジャケットは機械と一体となったクラウスを表していて秀逸です。何でもないところがとても良いです。

 クラウス・シュルツェの二枚目のソロ・アルバムは何と2枚組です。それもLPでは各面1曲ずつ20分を越える大曲をそろえて100分近い超大作です。よくも当時は有名でもなかったアーティストのこんな作品がこの時代に発売されたものです。

 発売元はオール・レコードを創ったウルリッヒ・カイザーの次なるレーベル、コズミッシュです。カイザーのはったりがなければタンジェリン・ドリームやクラウスが世に出ることもなかったと、クラウスは彼に感謝しています。

 一方、そのアイデアには辟易してもいて、特にレーベル名「コズミック・クリエ」、すなわち銀河の配達人というコンセプトは、クラウス自身が電報配達のアルバイトで生計を立てていただけに何とも複雑な思いだったようです。その銀河の配達人を改名したのがコズミッシュです。

 クラウスのこのアルバムはコズミック・ミュージックと一般に呼ばれました。レーベル名からも、サウンドからも自然ですけれども、クラウスはこれが気に入らない。コズミックと言われると、ドイツ発のスペース・オペラ、「宇宙英雄ペリー・ローダン」を思い起こさせるというのです。

 「サイボーグ009」と「キャプテン・ウルトラ」の違いくらいにしか思えませんが、本人にとっては本格派SFとヒーローものくらいの相違に感じられたのでしょう。しかし、そんなクラウスの意思とは関係なく、コズミック・ミュージックは結構定着しました。サウンドを説明しやすい。

 今作でもクラウスはまたまたコロキアム・ムジカ・オーケストラを訪れ、そのリハーサル・テープを入手します。そうしてそれをアルバム全体にあてはめていき、そこに壊れたアンプをつないだオルガンを加え、さらにサウンド処理を施していく前作同様の手法が採られています。

 しかし、今回からは簡単なシンセサイザーが加わりました。このため、シンセらしい電子音がアクセントになっていますし、ふわふわしたビートも見られるようになりました。さらにオリジナルのテープが発見されたことも与かっているのか、音質は格段によくなりました。

 ジャケットをみるとパーカッションも一部使っているようですが、リズム楽器として使っているわけではありません。したがって、基本的には前作と同じ路線だと言って間違いありません。ただし、前作の攻撃的な姿勢からより音楽的なアプローチになりました。

 まだシュルツェのトレードマークでもあるモーグ・シンセは登場しておらず、ボートラ収録の1978年ライブと比べれば、そのプリミティブでダークな色彩が際立ちます。まだまだ深淵を除き始めたばかりのコズミック・サウンドはなかなか味わい深いです。

Cyborg / Klaus Schulze (1973 Cosmmische)