髪の毛の盛り方は変わりましたけれども、相変わらずへんてこりんなメンバーたちのポートレイトがジャケットになってほっとしました。ケイト・ピアソンは変なスカートを履いていますし、シンディーはまるでビッグバードのようです。いい感じです。

 前作がややこしいことになったB-52sです。今回は自分たちの原点を見つめ直したのでしょう、プロデューサーにパーティー・ミックスを手掛けたスティーヴン・スタンレーを起用して、再びややこしくないダンスに戻りました。

 シンディーとケイト、それにフレッド・シュナイダーの三人はボーカルに専念し、ホーンにゲストを招いている他は、キース・ストリックランドとリッキー・ウィルソンがすべてのバッキング・トラックを担当するという原点を突き抜けるほどの回帰ぶりです。

 ただし、キースはドラム・マシンを導入していますし、その関係もあってシンセサイザーを多用したサウンドになっています。ボーカル陣が担当していたウォーキー・トーキーなどの小道具類も相変わらず絶妙な使われ方をしています。

 全体にストレートなダンス・オリエンティッドなポップ・ソングとなっており、ひとまずはファンをほっとさせました。リッキーのギターも健在です。実質二人がすべての楽器を担当しているためにかちっとまとまったサウンドになっていて、緩さがないのが少し寂しいですが。

 7曲目に「ムーン83」という曲が収録されています。これはファーストに入っていた「天空に輝く月」のリメイクです。何でここでまたリメイクをと思うわけですが、これは予定していた曲が収録できなくなったために窮余の一策として採用されたものです。

 もともとはヨーコ・オノの「京子ちゃん心配しないで」のカバーが収録されていました。ここにヨーコ側からクレームが来て発売直後に差し替えられたという事情です。ほとんどプラスチックスが演奏しているようで、面白いカバーですが、何がもめたんでしょう。

 ジョン・レノンはB-52sのファンでしたし、ヨーコの音楽と彼らの音楽に類似点を見出していました。さらにケイトとシンディーはヨーコの歌い方に大きな影響を受けたと話していて、ヨーコとB-52sとは因縁浅からぬ関係にあります。

 それだけにこの紛争は謎です。もっとも、後にB-52sのコンサートにヨーコがゲストとして参加して、一緒に「ロック・ロブスター」を歌ったそうですから、遺恨渦巻くという関係にはならなかったようです。ほっとしました。

 本作品は全米29位と、彼らとしてはそこそこのヒットになりました。デビュー作のような天真爛漫な姿はなく、紆余曲折を経てきた落ち着きが感じられるところに一抹の寂しさはありますけれども、ポップ・ソングとしての完成度は高く、後の大ブレイクを少しだけ予感させます。

 ほとんどすべての演奏をキースとリッキーの二人で行ったことで、リッキーのギターはさらに際立つことになりました。力の入ったPVを見るとギターの弦が一本増えて5本になっています。一体いつからでしょう。気づかなんだ。ぬかりました。

Whammy! / The B-52's (1983 Island)