大傑作です。7人になってしまったエビ中なので、心配していましたけれども、見違えるような傑作を仕上げてくれました。「中人」「金八」「穴空」と順調な成長を見せてきたエビ中ですが、ここは一段とまた違うステージに進んだように思います。

 今回のテーマは「原点回帰」と「中学生」なんだそうです。メンバーが着ているのは最古のセーラー服を若干現代寄りにリメイクした衣装です。やたらと短いスカートが目立つアイドル界において、とても新鮮に映ります。さすがに踊りにくいようですが。

 どちらが先なのか分かりませんが、アルバムのタイトルも「大正デモクラシー」に掛けた言葉になっています。ジャケットのタイポは大正時代に創業した活字屋さんの活版印刷をスキャンしたものだそうで、恐ろしいまでのこだわりぶりです。

 楽曲は実質10曲ですけれども、それぞれ全く違うチームが曲作りをしています。最初の「制服”報連相”ファンク」から気合が入っています。ギターのマサ小浜、ベースのJINO、ドラムのFUYUという海外で活躍するアーティストに在日ファンクホーンズ。ド迫力のファンクです。

 このアルバムにはメンバーのソロ・バージョンが付属しています。この曲は何と中山莉子。魅力的な滑舌の彼女の歌はこういうドファンクで輝くんだというのは発見です。続く「感情電車」はたむらぱんの曲。こちらのソロは小林歌穂。

 次の「紅の詩」は元ジュディ・マリのTAKUYAの曲です。アイドルを意識せずに書いた曲だそうで、スピード感にあふれていて、♪くれな~い♪のメロディーが美しい。やみつきになる名曲で、私はこのアルバム中で一番好きです。

 「日本一泣けるコミック・バンド」四星球の「コミック・ガール」はぁぃぁぃの魅力全開ですし、シングルカットされたレキシの「なないろ」、ヒャダインの「フォーエバー中坊」、ソロで歌う真山りかを始め、全員が覚醒したという「春の嵐」とどれも一癖も二癖もあります。

 そして元電気グルーヴのCMJKによる「藍色のマンデー」はニュー・オーダーの「ブルー・マンデー」が下敷きになっています。どちらのグループもメンバーを失くした状況は同じ。ピコピコ・リズムとブレイクの入り方が泣かせます。

 「さよならばいばいまたあした」と「君のままで」を加えて全部で10曲、そこにイントロを入れて11曲。捨て曲なしの全力疾走ぶりです。ここまで気合の入ったアルバムはそうそうあるもんじゃありません。係わった人全員の心が一つになったとしか言いようがない。

 松野莉奈さんが亡くなったことをあからさまに表現した曲は一つもありません。それでも彼女の存在がとても強く感じられるところが素晴らしい。たとえば「感情電車」のPVは彼女が最後に家族旅行した箱根をメンバーが旅するもの。カメラは松野さん目線です。

 感情移入しても良ししなくても良し。これだけのクオリティーのアルバムが出来たという事実だけでもう十分です。メンバーやスタッフの気持ちは痛いほど伝わってきます。神がかったような傑作だと言えます。これは凄い。エビ中ファンでよかったと思います。

Ebicracy / Shiritsu Ebisu Chugaku (2017 SME)