ヴォールトマイスターとなったジョー・トラヴァースによる作品第二弾です。タイトルはまたしてもガレージと韻を踏んで、「ジョーのドマージュ」と付けられました。ドマージュはダメージの昔の言葉だとも言えるようですが、ドメインからの造語だと考えてもよさそうです。

 ジャケットに写るフランク・ザッパ先生は足を組んでギターを弾いています。よく見ると彼が座っている椅子は車いすであることが分かります。そうです。この作品はザッパ先生がステージから突き落とされて大けがを負ってからまださほど日が経っていない時期の作品です。

 フランクは入院中にエレクトリック・チェンバー・ミュージックの構想を練り、足が完治しないままに、「ワカ/ジャワカ」と「グランド・ワズー」という大傑作の制作にかかりました。いずれも1972年後半の発表です。

 この作品はそのスタジオ2作品のリハーサル風景を収めたものです。場所はハリウッドではあるものの、どうしようもない小さなビルの一室です。ゲイル・ザッパはその惨状を生き生きと語っていますが、とてつもなく安価であったことはしっかり書き添えてあります。

 当然のことながら集まったメンバーは、いわゆる「ワズー・バンド」の面々です。しかし、必ずしも「ワカ/ジャワカ」や「グランド・ワズー」の参加者と一致しているわけではありません。特に「グランド・ワズー」は大人数ですが、ここではわずかに8人のみです。

 ここに参加していて両作品に全く絡んでいないのはイアン・アンダーウッドです。ザッパ先生の片腕としてマザーズの中で大きな役割を果たしたイアンが、この両作品のリハーサルに参加していたというのは驚きでした。

 もちろんサル・マルケスは参加していますし、ほぼ全編に参加することになるベースのエローニアスことアレックス・ドモチョウスキー(発音が分かりません)、ドラムのエインズレー・ダンバー、ギターのトニー・デュランの顔も見えます。両作品の中心人物たちです。

 フランク・ザッパのリハーサルは、キャプテン・ビーフハートほどではないものの、音楽漬けの毎日を送るという意味においては厳しいものだったと仄聞していました。それがここにこうして白日の下に晒されることになろうとは嬉しい限りです。

 このシリーズは残されたテープをできる限りありのままに提示することを旨としていますから、リハーサル風景がそのまま目の前に現れることになります。笑い声も混じる和気あいあいとした雰囲気で演奏が繰り広げられる様子は素敵なものです。

 音質は海賊盤なみなのであまり期待してはいけません。しかし、これくらいの方がいかにもリハーサルをポータブルなデッキに録音した本物感が高まるので嬉しいです。フランクが指示を出している様子もはっきり聞こえないだけによりかっこいいです。

 演奏は、後に「グランド・ワズー」と「ワカ/ジャワカ」に収録される曲ばかりです。この頃の曲は本当にいい曲ばかりです。それらの曲が出来上がっていく過程を見せられると、何だか特権的な地位を与えられたファンの気分になることができます。いいもんです。

Joe's Domage / Frank Zappa (2004 Vaulternative)