総勢17名がクレジットされたスナーキー・パピーの8年ぶりのスタジオ作品です。彼らはユニバーサルの公式サイトによれば、「デビュー以来称賛され続けるジャズ+ファンク+ダンス+フュージョンを融合した」サウンドで「最も売れているジャズ・アーティスト」です。

 このバンドはリーダーのマイケル・リーグを中心に30人前後のメンバーが流動的に参加して演奏するというローテーション・スタイルをとっている点がユニークです。「もともと想定していたことじゃないんだよ」とマイケルは語っています。

 「ほかの仕事でギグに参加できないメンバーが多くて、それを解決するためだったんだよね」ということで、徐々にメンバーが増えていったそうです。そして、「メンバーは楽曲の中にそれぞれの形で必ず足跡を残していくべきだ」と、何とも民主的な運営です。

 共演者に一切のアドリブを許さないキャプテン・ビーフハートの対極にあります。目指すは「ジャンルを問わず、ミュージック・ラヴァーが好きになってくれるようなグレイト・ミュージックを奏でるミュージシャンが集っているコミュニティ」です。

 ただし、公式サイトによれば「全員が全米1位の大学出身というエリート・ミュージシャン!」です。これはジャズ学において全米1位のノース・テキサス大学のことで、ここはノラ・ジョーンズも輩出しています。

 そんな彼らは数々の賞レースも席巻しており、当然グラミー賞も受賞しています。さらに「ビルボード誌とiTunesではデビュー以来最も売れているジャズ・アーティストに認定されています!」。何とも模範的ではないですか。

 さらにさらに「有名ミュージシャンから引く手数多」でロバート・グラスパーなどのジャズ・ミュージシャンだけでなく、ジャスティン・ティンバーレイクやスヌープ・ドッグなどのビッグ・ネームからも切望される人たちです。

 こうした評判の数々がすんなりと首肯できてしまうサウンドが出てきます。実に折り目正しい音楽です。基本的にはジャズだと観念されているわけですが、公式サイトが言う通りその雑食性は高い。それでも決して猥雑になるのではなく、しゅっとして気持ちが良いです。

 メンバーの中には日本人パーカッション奏者小川慶太がいますが、彼によれば、「スナーキーはゴスペル出身のミュージシャンが入ったことで音楽性が変わった」そうです。メンバーが増えるたびに勉強させてもらっている感じですか。

 年間200公演以上をこなす彼らの本領はライブで発揮されるわけで、スタジオ作品はかなり久しぶりのことだといいますが、そんなことは感じさせない、きちんとした熱いサウンドです。ロマンティックな曲からファンク全開の曲まで、とにかく気持ちが良いです。

 彼らは自主レーベルも運営していますし、同レーベル主催のパーティではコミュニティー・ワークや音楽教育までやるなど、まさにコミュニティーを運営しています。この作品はその彼らの大きな活動の一幕なのでしょう。サンプラー的に楽しむのがよさそうです。

参照:CDJ2016年9月(柳楽光隆)

Culcha Vulcha / Snarky Puppy (2016 Ground Up)