陸上競技は黒人選手に席巻されているのに、水泳競技はなぜかあまり黒人選手が活躍しません。身体能力が高ければ高いほど有利なはずなのに、なぜなんでしょう。そんな疑問を他所に、Pファンクは水中にもぐりました。

 前作で登場したサー・ノーズは踊れないばかりか泳げない。そんなサー・ノーズを尻目に、ドクター・ファンケンシュタイン扮するミスター・ウィグルが中心になって、水中で大騒ぎのパーティーをするというのが今回のコンセプトです。

 アルバム発表後のツアーでは、魚の被り物をして歌い踊っています。これはもはや竜宮城です。洋の東西を問わず、水中には楽園があって、歌と踊りに明け暮れる生き物たちがいることになっているんでしょう。

 ジャケットは、サー・ノーズが災難に会っているところはこれまでのパターンですが、白を基調にすっきりとまとまっていて、パーラメントのアルバムとしては異色です。見開きジャケットは飛び出す絵本形式になっていて、それを紙ジャケは見事に再現しています。

 サウンドの方も紛れもなくパーラメントのサウンドながら、テイストはかなり変わってきています。これはファンカデリックの作品と同じく、ウォルター・ジューニー・モリソンの参加によるところが大きいと思われます。

 ジューニーはここではJSテラコンとクレジットされています。その担当はギター、ベース、ドラム、キーボード、ボーカル。要するに全部です。いかに彼の貢献が大きいかが分かるというものです。ただし、彼もジョージ・クリントンによる扱われ方には不満があったようですが。

 不満と言えば、前作以降のツアーの最中にメンバーが反乱をおこしています。基本的には金銭トラブルです。結果、グレン・ゴインズと新しく加入したホーン・セクションが離脱していき、とどまったメンバーも謹慎したりしてしこりが残りました。

 そんな雰囲気で制作されたことが嘘のような力作ですけれども、昔からいたメンバーの退潮が新たなサウンドへの変化を促したのだととることもできます。Pファンクはプラットフォームですから、メンバーが出入りすればサウンドも変化することを思い知ります。

 このアルバムからは「アクアブギー」がR&Bチャートを制しました。パーラメント名義では2曲目です。もともとブーツィーたちの曲でしたが、これもパーラメントに向いています。この曲ではピアノが面白い。現代音楽風のピアノが最後は「メリーさんの羊」となって終わります。

 それが典型ですが、このアルバムではバーニー・ウォーレルとジューニーのキーボードが大活躍しています。バーニーのシンセはこれまでもPファンクの顔でしたけれども、このアルバムにおけるキーボードは少し意味合いが違います。一言で言えば主張している。

 かちっとしたファンク・アルバムであることは間違いないのですけれども、水中に潜った分、スペース・オペラ的な広がりからは遠ざかりました。コンパクトにまとまった、祝祭的というよりも音楽的なパーラメント・サウンドです。

Moto-Booty Affair / Parliament (1978 Casablanca)