いよいよBiSHがメジャー・デビューすることになりました。結局、インディーズ時代は1年半、このメジャー・デビュー作が3枚目のアルバムですから、もの凄い速さで駆け続けてきたといえます。まあメジャーとインディーズの区別が私には良く分からないのですが。

 わざわざインディーズというのも戦略なのでしょう。盛り上げ方がうまい。このメジャー・デビュー盤は基本はロックながら、さまざまなタイプの曲を集め、さらにメンバーが作詞を担当した曲が半分以上を占めるという話題に事欠かないてんこ盛り状態です。

 メジャー・デビューにあたって、BiSHの仕掛け人となる音楽プロデューサー、渡辺淳之介は「楽器を持たないパンクバンド」というコンセプトを用意しました。「新生クソアイドル」から の進化で、これまでよりも格段にパンク成分が濃厚になりました。

 今やアイドル業界は百花繚乱の気配を漂わせていて、何でもアリ状態です。中にはヘビメタとアイドルの合体として今や世界を席巻するベビーメタルがあるわけですから、パンクとアイドルの合体があってもおかしくはありません。

 ただし、パンクには職人的な洗練を必要としないという意味合いもあります。アイドルも言うなれば歌唱での洗練とは無縁ですから、もともとアイドルはポップス界のパンクだと言えます。ということで両者はとても相性が良いです。

 したがって、一見、過激に見えるコンセプトですけれども、何と言いますか、普通にありだと思います。ロックに馴染んだ耳からすれば、とても分かりやすいサウンドが展開しますし、歌詞の世界も適度に分かりやすいです。

 サウンド面のプロデューサーは松隈ケンタで、彼が主催するクリエイター集団スクランブルズが全面的にバックアップしています。そのサウンドは、パンク、それもハードコアから、ロック、特にエモと呼ばれるエモーショナルなロック・サウンドが中心です。

 シングル・カットされた「デッドマン」はハードコアなパンクですが、「ステアウェイ・トゥ・ミー」は明らかにレッド・ツェッペリンの「天国への階段」のパロディーです。「本当本気」は♪みんなが僕をバカにすんだ ナメんな♪とかわいいです。

 キラー・チューンと一般に認識されているのが「オーケストラ」です。BiSHと言えば「オーケストラ」、彼女たちの代名詞となる曲で、Jポップの王道をパンク風味で歌い上げる名曲として定評があります。アイナ・ジ・エンドからセントチヒロ・チッチへとつなぐサビがカッコいい。
 
 しかし、一押しは「アム・アイ・フレンジー?」です。マイケミもかくやと思わせるエモなロックをプログレ歌謡的に展開していて見事です。ボーカルも最高です。昔のロック・ファンならむしろ懐かしく思える類の音です。アイドルの世界もなかなか面白いです。

 BiSHはハグ・ミィが脱退し、「僕の妹がこんなにかわいい訳がない」アユニDが新たに加入しました。一見、とてもアイドルらしいアイドルですが、この子の加入はBiSHの先鋭的な部分をさらに研ぎ澄ますことになったように思います。ますます目が離せない。

Rewritten on 2018/9/24

KiLLER BiSH / BiSH (2016 Avex Trax)

私もBiSH歴が長くなったので書き直しました。オリジナルにいいね!して頂いた10名の方には申し訳ありません。