このアルバムを手に入れた時、まずは激しく後悔しました。公式サイトに直接注文して入手したのですが、予約はしていませんでした。事前に予約していれば、名前がインサートに掲載されたのに...。何ということでしょう。
 
 日本の方のお名前もちらほら見かけられます。総勢2000人強の名前が、なぜか絶滅した、もしくは絶滅が危惧される動植物の名前と並んで掲載されています。ザッパ・トラストによる音源発掘シリーズ第一弾ですから、事前予約は心強かったことでしょう。
 
 これは、フランク・ザッパの過去音源を発掘するヴォールターナティヴ・シリーズの第一弾です。1976年1月20日にオーストラリア、シドニーのホーダーン・パヴィリオンで行われたコンサートをほぼ完全に収録しました。
 
 この会場で行われたコンサートは、ザッパ先生のパシフィック・ツアーの一環で、20日と21日の2日間です。ちなみにオーストラリアでは他にメルボルン、パース、アデレードで計5回のライヴが行われています。
 
 そして、その後、日本にまわってきたんです。ということで、日本公演と同じメンバーで、似たようなセットリストですから、日本人にとっても嬉しい発掘です。しかも、一曲だけですが、「ハウ・クッド・アイ・ビー・サッチャ・フール」に日本青年館の音源が一部使用されています。
 
 その部分と最後に収録された「カイザー・ロールズ」が1月6日のリハーサル音源であることを除けば、すべて20日のステージの音源です。録音時にテープ交換のために穴があいたところはブートレグを使うという荒業です。どの部分かは音が悪いので聴けば分かります。
 
 残念ながら完全ではなく、2曲「ハイー・ドンチュー・ワナ・マン・ライク・ミー」と「トライング・トゥー・グロウ・ア・チン」がカットされ、ゲイル・ザッパの強い主張で、先のリハーサル音源が収録されています。惜しい。
 
 肝心のサウンドですが、まずはわずか5人による演奏であることが嬉しいです。ドラムはテリー・ボジオ、ベースにロイ・エストラーダ、サックスにナポレオン、キーボードにアンドレ・ルイスです。ギターはFZただ一人、先生のギターを堪能できます。
 
 ゲストはオーストラリアのTV番組のホスト、ノーマン・ガンストンでハーモニカによる参加です。スティーヴィー・ワンダーから譲り受けたハーモニカにはスイカの種がつまっていたと軽口を叩いていますが、ゲストとしても最小限です。
 
 決して音質は最高とは言い難いのですけれども、このコンボによる演奏をたっぷり聴くことができるだけで、満足です。5人とは思えない、ザッパ先生らしいグルーヴが全体を覆っており、お馴染みの曲もとても新鮮です。
 
 特に二枚目がいいです。テリーのドラム・ソロを含む「チャンガの復讐」から「ズート・アルアーズ」への流れなどかっこいいです。このアルバムでしか聴けない「カイザー・ロールズ」が2回収録されているのは先述の通り、ゲイルによるファンへの気遣いでしょう。
 
FZ:OZ / Frank Zappa (2002 Vaulternative)