南太平洋の島々に関連した催しがあると、実際には南にあるわけではないハワイが幅を利かせています。あまり区別がついていない人が大半なので、大洋州出身の方はいつも嘆いていらっしゃいます。

 それほど日本人には太平洋の島といえばハワイです。そしてハワイの音楽は日本でも馴染みが深いです。もちろん伝統的なハワイアンの人気が高いわけですが、どうしてどうしてコンテンポラリー・ハワイアンもかなりの地歩を築いています。

 ハワイ音楽のブームは何度も来ていますが、セシリオ&カポノもその一つのきっかけとなっています。何とも感想の述べようのない微妙なジャケットに包まれたこの作品はデュオの3作目にあたります。ハワイの風を運んできた一枚です。

 当時、どのように受け入れられたのかは、アルバムにまかれた帯の煽り文句が物語っています。「都会派の君におくる、サーフィンの本場ハワイで生まれたニュー・ミュージック!今!ヤングの間で話題騒然!」。

 懐かしい言葉が満載です。当時、サーフィンはおしゃれの代名詞のようでした。ハワイはサーフィンと結ぶことで、「都会派」の「ヤング」にふさわしい音楽となったのでした。まるでサウンドはサーフィンっぽくはないのですが。

 帯にはちゃんとサウンドの説明もしてあります。「ハワイ独自のゆったりとしたリズムにウエスト・コーストのシャレた、シティ・サウンドをミックスした新しいフィーリングのロックです」。そうなんです。セシリオ&カポノはハワイと西海岸のデュオなんでした。

 ネイティブ・アメリカンの血を引くメキシコ系のセシリオ・ロドリゲスはカリフォルニアのサンタバーバラ出身です。学生時代からバンド活動を行っていたセシリオがハワイにツアーをした際にかの地がすっかり気にいっていついてしまったのだそうです。

 そこで出会ったのが、ホノルル近郊で生まれ育ったハワイアンのヘンリー・カポノです。二人は意気投合してデュオを結成、活動を開始すると、ほどなく米本土のCBSレコードと契約を結ぶという順調な滑り出しでした。時代はハワイを待っていたのでしょうか。

 1枚目、2枚目はCBSが名うてのスタジオ・ミュージシャンをそろえてバックアップしましたが、この3枚目はトム・スコットやニック・デカロの名前はあるものの、日頃の仲間たちと作り上げたものと思われます。好みは分かれますが、こちらの持ち味も捨てがたいです。

 このデュオはそれぞれが曲を書いています。セシリオが3曲、カポノが6曲、カバーが2曲です。二人の曲は対照的というわけではなく、デュオとしての個性がしっかりと出されているように思います。カポノの曲の方がハワイっぽいとは思いますが。

 特にこの時代特有の何かがあるというわけではありませんけれども、70年代への郷愁を掻き立てるサウンドです。むくつけき男二人が綺麗とは言えない声で美しいバラードを歌う。ソウルやジャズに侵略されたハワイ音楽には70年代が詰まっています。

Night Music / Cecilio & Kapono (1977 CBS)