ジェネレーションXとは、ベビー・ブーマー以降の世代、厳密には1961年から1981年に生まれた世代のことを指します。ダグラス・クープランドという人の著作から出た言葉で、英米ではポピュラーな言い方です。

 日本では新人類と言われた世代に該当します。ちなみに私は1960年生まれなので、ここには該当しません。加えてその前の団塊の世代にも当たらないので、すきま世代と言われることになりました。考えてみればひどい言い方です。

 バンドの方のジェネレーションXも、実はメンバーはすきま世代の人々です。何となく響きがカッコいいからつけてみたという軽いのりが感じられます。ただし、デビュー曲は「ユア・ジェネレーション」。ちょっとはメッセージ性がある模様です。

 バンドの中心は後にソロで大ヒットを飛ばすビリー・アイドルです。彼はチェルシーというバンドでも活動していましたが、多くの場合、「セックス・ピストルズの親衛隊にいた」と紹介されます。ソロ以降もそうなのですが、彼のイメージは「パンクのファン」です。

 ビリーのボーカルを支えるのはギター、ベース、ドラムというロック最小コンボです。ベースのトニー・ジェイムズは後に物議を醸したジグ・ジグ・スパトニックで一応成功を収めますし、ドラムのマーク・ラフ、ギターのボブ・アンドリュースもそれぞれそれなりに活躍しています。

 振り返ってみると、結構なメンバーが揃っていたということですが、デビュー当時はちょっと不思議な感じでした。バンドとして活動しだしたのは1976年ですから、パンク時代なのですが、このレコードは1978年で、パンクは盛りを過ぎていました。

 クラッシュがメジャーと契約した時点でパンクは終わったとするパンク原理主義者でなくとも、ジェネレーションXは遅れてきたパンクでした。やはり、パンクのファンなんです。しかし、それはそれで大変楽しいバンドでした。

 むしろグリーン・デイにつながるパンクの礎を築いたと言えるのではないでしょうか。サウンドもパンク的なスピード感を持ちながらもとてもポップでした。ザ・フーなどの60年代のポップなサウンドを再生させたわけです。

 例えば「レディ・ステディ・ゴー」という曲では、ストーンズやビートルズ、そしてディランに賛辞を贈り、同名番組の伝説のプレゼンター、♪キャシー・マクガワンが好きなんだ♪と叫んでいます。70年代パンクにはありえない態度です。

 しかし、この感覚はむしろ2000年代的です。アティテュードを云々するパンクではなく、音楽の一形態として後々までつながっていくパンクに近い。最初から最後まで、パンクなノリを残しながら、とにかく生きのいい大そう楽しいポップなロックが続いていきます。

 とはいえ、この時代にこのルックスでこのサウンドを貫くのは難しかったことでしょう。メンバー間の意見は対立していったようで、バンドは短命に終わります。遅れてきたパンクというよりも早すぎたパンクだったのかもしれません。

Generation X / Generation X (1978 Chrysalis)