キレのいいホーンはそれはそれはカッコいいものです。どこの学校にもブラスバンド部がありますけれども、ファンキーなキレのブラスバンドというのはあまりありません。目指すところが違うということでしょうか。

 ボストン・ホーンズは、その名の通り、ボストンで活躍する「グルーヴィンなジャズ・ファンク・ホーン・バンド」です。帯には「疾走系爆裂ジャズ・ファンク・チューン」とありますが、この追い立てられるようなリズムを表現して秀逸です。

 ボストン・ホーンズの結成は1999年のことです。ライナーによれば、オーストラリアのヘビメタ・バンド、「エクストリームのサポートなどで活躍していたユニット”ヘヴィ・メタル・ホーンズ”のメンバーだったギャレット・サヴルクとヘンリー・ダグラス・Jr」が中心となったそうです。

 彼らのファンは日本にもたくさんいます。というわけで、この作品は日本のインパートメントという会社のアガテというレーベルから出された独自の編集盤です。カバーのデザインも日本で行われていて、愛に溢れた良いジャケットになっています。

 ここに収められた楽曲は、彼らの初期4作品から選ばれています。1999年の「イッツ・イン・ユア・フェイス」、2001年の「ブギー・ストップ・シャッフル」、2003年の「イースト・コースト・ファンク」、2004年の「ユーヴ・ガット・トゥ・ファインド・ユア・オウン・グルーヴ」です。

 ホーンを中心としたバンドではありますけれども、ホーンはギャレットとヘンリーの二人だけで、他にギター、キーボード、ベースにドラムと意外と普通の編成です。ゲスト参加のミュージシャンもギターやパーカッションばかりです。

 特にギターはジャム・バンド・シーンで活躍していた名ギタリストのメルヴィン・スパークスがゲスト参加して、ゴリゴリのギターを聴かせていますし、オリジナル・メンバーのジェフ・バックリッジのファンク・ギターも大活躍しています。

 マーク・ロンゴのキーボードもファンキーそのものですし、キレキレのリズムも含めて、全身全霊でファンクです。タワー・オブ・パワーを彷彿させる部分もありますけれども、もちろん、過去のファンクをそのままやっているわけではありません。

 クラブ・ミュージックの現在形も踏まえて、クラブ・ジャズ的な持ち味もありますし、過去の偉大なジャズへの敬意も随所に感じられます。特にジャズ・ジャイアンツに捧げた「ヘッド・イン・ザ・ヒストリー」では先達のフレーズを散りばめていて楽しいです。

 さらにジミ・ヘンドリックスの「クロスタウン・トラフィック」では本格的なボーカルを披露していてロックしています。ラテンっぽいノリの「ジャッキーズ・ソング」などもあって、かなり音楽の幅も広いです。

 全体を通して疾走するブラス・サウンドが中心であることは間違いなく、終始アゲアゲのテンションが凄いです。とにかく明るくて楽しいサウンドです。出張コンサートもお願いできるそうですから、一度、お願いしてみたいものです。

Speedball / Boston Horns (2011 AGATE)