ジャケットには謎のカメレオン男がアルバム・タイトルそのままにポーズをとっています。裏面ではスネイクフィンガー本人がポーズをとっていますが、これが変です。左足が左手に、右手が右足になっていて、しかもそれがろくろ首のように伸びています。

 ジャケット・デザインは前作と同じくポル・ノウ・グラフィックスという人をくった名前の人たちです。超古代の遺跡を思わせるデザインはスネイクフィンガーの超時代的雰囲気を体現していて、何と言うことはないのに妙に惹かれます。

 この作品はスネイクフィンガーの最高傑作だと私は信じています。前作の翌年に発表されたセカンド・アルバムですけれども、前作に比べるとよりスネイクフィンガーらしさが現れてきたと思います。

 当時、ラルフ・レコードの作品群は懐に優しかったです。メジャーどころは別として、イギリスからの輸入盤は値段が張りましたが、アメリカ盤はそうではありませんでした。レコード店をはしごして探しに探した末に見つかったものの値段が高くてあきらめたということがありません。

 スネイクフィンガーのアルバムはあまり見かけなかったので、西新宿のレコード屋さんで見つけた時は嬉しかった。そして値段も安かった。それだけで幸せでしたが、音楽を聴いて幸せが倍増しました。そしてかなりのヘビロテで聴いていたものです。

 ♪ドント・ライ♪、♪トラッシング・オール・ザ・ラヴ・オヴ・ヒストリー♪、♪リヴィング・イン・ヴェイン♪、♪アイ・カム・フロム・アン・アイランド♪。このアルバムでは、多くの曲で、曲のタイトルがそれぞれの曲での決め台詞になっています。

 これが私の脳裏に深く深く刻まれてしまっており、今でも場面場面に応じて、それぞれのフレーズがメロディー付きで口をついて出てきます。朗々と歌い上げるというよりも、しゃべりの延長のような歌い方なので、余計にサブリミナル効果が高いんです。

 前作に比べても、各楽曲がキャッチーになりましたし、サウンドがスネイクフィンガーっぽくなりました。スネイクフィンガーっぽいって何だと言われるでしょうが、これはザ・レジデンツ風味が減ったということです。より簡単に言うとギター・アルバムらしくなりました。

 独特の音色は健在で、さらに多彩になっています。一方で、ヘビメタ風だったり、ファンキーだったり、ハード・ロック風だったり、比較的普通にロック寄りな表現が強いです。ブルージーでもありますし、チリ・ウィリをやっていただけのことはあります。

 私の一押しは「私は島育ち」です。魚しか食うものがないというナンセンスな歌詞は抜群ですし、どすの利いたボーカルによる♪アイ・カム・フロム・アン・アイランド♪というアイランド宣言は潔くて素敵です。

 ふざけているわけではないけれども、全体にお間抜けな雰囲気が漂っており、目玉男たちの世界とも少しだけ距離がある唯一無二の存在感です。はまる人ははまります。私はこのアルバムにはずっぽりとはまって出られなくなってしまいました。

Greener Postures / Snakefinger (1980 Ralph)