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パフィーは「萌え」とは無縁のアーティストです。「萌え」という言葉は、さまざまに解釈されますが、人なり物なりの本来の性質、ないしはそれが与えようと意図しているものと、受け止める側の消費の仕方がずれてしまうところに発生する言葉ではないかと思います。
アーティストも思わぬところで消費されてしまいます。「腋の下に萌え」とか。ロリコンも典型的です。本来、性的存在でない子供を性的に消費するということですから。したがって、「萌え」狙いというのは本質的に成立しないことだと思います。
パフィーは実に等身大です。アーティストから提供される姿、そのまんまを皆が受け止めていて、「萌え」の発生する余地がないように思います。その証拠に、パフィーにはお宝写真がありません。吉村由美のレントゲン写真くらいです。
それにスキャンダルがあっても安くならない人たちです。思えば、結構な私生活のスキャンダルもありましたが、それも関係ありません。スキャンダルを肥やしにするとか、キャラを強化するとかそういうのでもなく、単に右から左に抜けていきます。
ですから、意図せざるところで作品を曲解されるところがありません。レジデンツが匿名性を保つことで守ろうとしていることを実に自然にこなしています。メディアへの露出は多いですが、なぜか音楽以外のところははっきりしない印象があります。
未だに、どっちがアミでどっちがユミなのか、マナカナが区別できないくらいに分からない人は多いのではないでしょうか。美人なのかどうなのかも何だかよく分かりません。要するに記号性が高いと言えます。漫画にしたのは実に慧眼だと思います。
そして音楽はどれもこれも見事にパフィーらしいです。そのまんま。楽曲の良さがストレートに響きます。押し付けがましさが皆無。曲作りは奥田民生や井上陽水、ジェリーフィッシュのアンディー・スターマー、草野正宗などとそうそうたる顔ぶれです。
その作品群を、実に丁寧な編曲をバックに、透明な姿で歌っています。泥臭さがない。好き嫌いが分かれない。楽曲の力をストレートに表現していて、飽きがきません。稀代の名曲「アジアの純真」は彼女たちじゃないと歌いこなせないでしょう。
もろビートルズの「これが私の生きる道」もそうです。自己主張が強いと汚れるタイプの歌だと思います。パフィーは歌がうまいのか、という質問が全く場違いに聞こえる不思議な人たちです。小室ファミリー全盛期のJポップ界にあって救世主の役割を果たしました。
彼女たちのボーカルの魅力は不思議なユニゾンにあります。奥田民生の要請でビブラートを効かせない歌唱法を採用していて、唯一無二のボーカル・ハーモニーとなっています。そんな分析をするのも変な感じですが。
Hit & Fun / Puffy (2007 Ki/oon)