スライ&ロビーのビル・ラズウェルとのコラボレーション第二弾です。コラボ第一弾の「ランゲージ・バリアー」はセールスはさっぱりでしたが、この異能デュオに対する国際的な認知度を高めました。

 グレース・ジョーンズやボブ・ディランなどとのコラボを通じて評価は高かったわけですけれども、リーダー・アルバムでは初めてのことでしたから、二人は大いに気をよくしたことでしょう。今度はよりコマーシャルにするというコンセプトで再度コラボに挑戦しました。

 今回も豪華なゲスト陣が参加しています。まず、Pファンクから二人の大物、ブーツィー・コリンズとバーニー・ウォーレル。面白いのはブーツィーは本職のベースではなくギター、バーニーもプリぺアード・ピアノでの参加です。

 目立つのはボーカル陣です。後にスティングのカバー「ジャマイカン・イン・ニューヨーク」でヒットを飛ばすシャインヘッド、ストーンズと長年ツアーしているバーナード・ファウラー、Pファンクからゲーリー・マッドボーン・クーパーなどが参加しています。

 アイランド・レーベルのオーナー、クリス・ブラックウェルからは、ダンス・アルバムを作れと言われたため、レコードの両面がそれぞれ曲間のないノンストップ・ダンス・アルバムになっているのが本作の一つの特徴です。

 これは形式だけに留まるわけではなく、全体にダンサブルな楽しいアルバムになっています。前作がシンセやサンプリングの実験だったとすれば、こちらはすっかり自家薬籠中の物にしています。いかにもビル・ラズウェルなところが薄れて、スライ&ロビーの色が濃いです。

 1曲目は「ファイヤー」、ねっとりお色気ジャケットで有名なファンク・バンド、オハイオ・プレイヤーズのヒット曲を引用しています。原作の魅力を保持しながら、むしろこちらが本家かと思わせるこなれぶりが嬉しいです。

 カバーは他にもポインター・シスターズの「イエス・ウィ・キャン・キャン」があります。リズムもカバーとはいえ、かなり印象が異なります。原作もカッコいいですが、こちらもまた素晴らしい。彼らの場合、オリジナルもカバーも関係ありません。さすがは天下のリズム隊です。

 前作で見られた「フューチャー・ショック」的なサウンドは今回はなりを潜めています。そして、より落ち着いたボーカルが光ります。特にシャインヘッドのラップ的なボーカルはリントン・クウェシ・ジョンソンのダブ・ポエトリーを少し想起させます。

 二人は曲を用意してスタジオにやって来ましたが、クリス・ブラックウェルはいつもの通り、即興でやるべしと言ったそうで、結局、スライがメロディのことを考えずにドラムを叩き、それにロビーがベースを付けていく形でリズムが出来ていったんだそうです。

 ともかく、この二人のリズムは何とも中毒性が高く、今作でも結局気がつくと二人のリズムだけを追っています。上物がリズムを引き立てるためにあるという、見事なリズム中心主義です。これはなかなかないことです。素晴らしいことこの上ない。

Rhythm Killers / Sly & Robbie (1987 Island)