悪そうなジャケットです。このメガネはイッセイ・ミヤケによるものです。アルバム・クレジットには参加ミュージシャン名は端折ってありますが、イッセイ・ミヤケの名前はしっかりクレジットされています。それだけ眼鏡がお気に入りだということでしょう。

 レゲエを聴こうとすると、スライ&ロビーを避けて通ることはできません。一説には彼らが係わった楽曲は20万曲を越えるそうです。さらにはボブ・ディランとのコラボなどもありますから、レゲエを聴かなくても、CD棚に収まっている確率が高いと思われます。

 彼らはレゲエ界を支えるリズム隊です。このユニット名でのアルバム発表は少ないですが、二人一組で数多くの作品に参加しています。1970年代半ばから現在に至るも活躍中といいますから、どれだけ息があったコンビなんでしょう。

 この作品は、ニューヨークの鬼才ビル・ラズウェルと組んだ作品です。ビル・ラズウェルと言えば、この当時、アフリカ・バンバータの作品やハービー・ハンコックとの「ロック・イット」によってヒップホップを一般化したことで勢いがありました。

 スライ&ロビーは、レゲエ界の人ではありますが、進取の気性に富んでいて、電子楽器の導入にも全く躊躇はありませんでした。ラズウェルと気が合うわけです。こうして二組は合流することとなって、この作品が生まれました。

 もともとリズム隊ですから、上物にはさまざまなゲストを招くことにも躊躇があるわけもなく、この作品には豪華なゲスト陣が参加することとなりました。一番の大物はもちろんボブ・ディランです。ディランの1983年作品「インフィデル」への全面参加が縁でしょう。

 ラズウェル人脈からは、バンバータにハービー・ハンコック。「ロック・イット」を思わせる部分が随所に現れるのはビルと彼らのせいでしょう。さらにPファンクからバーニー・ウォーレルやマイケル・ハンプトン、アフリカからはマヌ・ディバンゴも参加しています。

 さらにギターには後にエイジアにも加入するパット・スロールなど、何人ものギタリストが参加していて、ロック寄りの演奏を聴かせてくれます。マイルス・デイヴィスの壊れたカバーもありますし、振れ幅の大きな作品になっていると言えます。

 1985年という時代を考えると、この作品は当時の最先端を行くサウンドだったと言えます。ラズウェルのヒップホップ趣味がそうだったわけです。新しいテクノロジーや、スクラッチなどの新たなテクニックをふんだんに使っています。

 ところが、今聴くと、当然そのあたりが何とも懐かしいことになります。電子楽器の進歩は凄いので、むしろ原始的な響きに聴こえてしまいます。そこがなかなか乙な味わいとなるという倒錯した楽しみ方もできます。

 倒錯していない楽しみ方は、二人のリズムに身を任せることです。何で彼らのリズムは飽きないんでしょう。時に上物が邪魔だとさえ思ってしまいます。単調なリズムが続いても、彼らの場合はいつまでも聴いていられます。20万曲はだてじゃありません。

Language Barrier / Sly & Robbie (1985 Island)