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その影響でレゲエに親しむようになった私にとって、当時のブラック・ウフルはレゲエ界のチャンピオンでした。スワヒリ語で「自由」を意味する「ウフル」を使ったユニット名といい、ルックスといい、音楽といい、ディープなレゲエ・パワーに満ちていました。
ブラック・ウフルは、実質的なリーダー、ダッキー・シンプソンを中心に1970年代の初めに結成されました。黄金期はリード・ボーカルのマイケル・ローズとカリフォルニアからやってきたサンドラ・ピューマ・ジョーンズのトリオ期です。
彼らはジャマイカの超絶リズム隊スライ&ロビーの全面的なサポートを得て、傑作を連発します。この作品は彼らの9枚目のアルバムということです。前作「レッド」には及びませんでしたが、全英チャートではそこそこヒットした作品です。
この頃、彼らはローリング・ストーンズのツアー・サポートを行っており、その面からも人気が高まってきた頃です。キース・リチャーズはローズのソロ作にはゲストで参加していますから、よほど彼らのことが気に入っていたんでしょう。
ブラック・ウフルの魅力はボーカルにあります。レゲエには珍しいボーカル・グループです。マイケル・ローズの灰汁の強い粘り気のあるボーカルに、シンプソンとピューマがハモっていきます。ピューマは女性ですから、これも珍しい。
そのボーカルを支えるのがスライ&ロビーの強力なリズムです。ルーツ・レゲエというにはかなりロック寄りのリズムですから、ロックの人にも意外と聴きやすい。さらに百戦錬磨のコンパス・ポイント・オールスターズがサポートしていますから。これまた耳になじみやすい。
こうしてサウンドはまごうかたなきレゲエながらロック耳にも優しいのですが、ボーカルは重い。直截なメッセージが投げかけられてきます。歌詞を一生懸命追っていかなくても、真摯なメッセージが届けられてきます。言葉が分からなくても伝わってくるわけです。
黒い自由を標ぼうする闘士の集団という趣きです。その近寄りがたいオーラが漂っているところがとてもクールでした。レゲエは当時のファッションでしたから、ふらふらと寄っていくと、こうしてガツンと頭を殴られる。そんな具合でした。
スライ&ロビーも当時はまだ国際的な評価を確立していたわけではなく、コンパス・ポイント・スタジオのオール・スターズの中核として活動していた頃です。ブラック・ウフルとのコラボは彼らの名声を確立することに大いに貢献しています。
ここでもスライはシモンズ・ドラム・シンセサイザーを駆使して革新的なサウンドを作りだしており、それがボーカルの魅力を一層際立たせています。腹にもこたえる背筋の凍るボーカルは革新的リズムを従えて凛として光っています。
Chill Out / Black Uhuru (1982 Island)