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評論家受けは最高でした。渋谷陽一氏も「七○年代ロックが誇るべき名盤である」と言い切っています。このアルバムについて語る人は押しなべて最大級の賛辞を贈っています。アマゾンのサイトを参照して頂ければよく分かります。
リトル・フィートは前作が商業的に成功しなかったことも大きな要因となって、ベースのロイ・エストラーダが脱退してしまいました。代わりにデラニー&ボニーのバンドにいたというケニー・グラッドニーが加入しただけでなく、二人を加えて6人組となりました。
加わった二人、コンガのサム・クレイトンもデラニー&ボニーから、ギターのポール・バレールはローウェル・ジョージの高校の後輩だということです。このメンバー・チェンジはリトル・フィートの音楽を大きく変えることになりました。
サムとケニーはニュー・オーリンズ所縁の人だということで、ローウェルとビルの共通の興味だったニュー・オーリンズ風味が増しました。それはニュー・オーリンズの巨匠アラン・トゥーサンの曲をカバーしていることからも明らかです。
ブルースやゴスペル、R&Bにロックと米国の伝統的な大衆音楽のすべてをごちゃ混ぜにして出てきたのがリトル・フィートの音楽です。以前からそうだったわけですが、このアルバムでは明らかに一皮むけました。
冒頭の「ディキシー・チキン」はリトル・フィートを代表する名曲。ファンキーが服を着て歩いているような曲です。前作に比べると、随分とすっきりした洗練された音になっています。ファンキーという軸を真ん中に据えた結果でしょう。
メンバーの指向も一致して、皆が同じ方向を向いています。そう考えると髭のロイの立場がないようですが、彼がリトル・フィートにいたこと自体に違和感を感じないこともないので、しょうがないです。
独特のリズム感はここでも健在で、汲めども尽きぬ味わいが滴っています。今回はビル・ペインのキーボードも以前より活躍しています。そしてそのキーボードや、ローウェルのギターから聞こえてくるリズムがいいんです。
ローウェル・ジョージはスライド・ギターで有名な人ですが、体にしみこんだリズム感が何とも言えず魅力的です。さらにサムのコンガも入りますから、味わいがさらに増します。ウェスト・コースト・サウンドの一つの完成形でしょう。
しかし、ローウェルのボーカルの魅力を忘れることはできません。決して綺麗なボーカルではありませんが、やさぐれた男のレイド・バック・ボーカルは素晴らしいです。絶妙のリズムと錆びたボーカルが彼らの魅力でした。
Dixie Chicken / Little Feat (1973 Warner Bros)