![](https://stat.ameba.jp/user_images/20141102/23/memeren3/45/a1/j/t01950200_0195020013117376412.jpg?caw=800)
スティーヴィーとマイケル・ジャクソンは、子どもの頃からショウビズ界で過ごしてきたという点で似通っています。マイケルのお別れ会でブルック・シールズがスピーチしていましたが、特殊な青春ですから、二人は分かりあうところが多かったのかもしれませんね。
もとよりこの二人はブラック・ミュージックを完全にメイン・ストリームに押し上げた偉人として記憶されるべきでしょう。ソウルフルでありながら、黒すぎもしない。見事なサウンドを作り上げた二人です。ちなみに、このアルバムもグラミー賞の最優秀アルバムに選ばれています。
この作品はスティーヴィーが自覚的に画期を図ったものと言えます。大たいタイトルがそうですよね。達成感を味わって最初の終幕を迎える。ジャケットには階段があって、それを上って4段階目がこの段階だということです。
裏ジャケットには、ケネディー大統領やキング牧師と並んで、子どもの頃のスティーヴィー、少し成長したスティーヴィー、結婚式のスティーヴィー、そして前3作品のジャケットが描かれています。まさに集大成です。
楽曲の方は、前作、前々作と同じ路線で、シンセ・プログラミングの二人との共同制作となっています。一人でスタジオで作り上げたという路線ですが、これまでに比べると心もちゲストが増えました。
ジャクソン5もそうですが、モータウン黄金時代を支えたベーシストのジェームズ・ジェマーソン、スティーヴィーが支えたミニー・リパートンなど多彩な顔ぶれです。余裕のようなものを感じます。あるいはファースト・フィナーレの記念でしょうか。
スティーヴィーは前作発表直後に交通事故に遭い、生死の境をさまよいました。一週間も昏睡状態にあったようで、回復は奇跡でした。そういうことがあってのキャリア一区切りですから重いものがあります。何となくではないんでしょうね。
それを反映しているのか、シリアスなミディアム・テンポの曲が多いです。ナンバーワン・ヒットとなった「悪夢」などはクラヴィネットを全面的にフィーチャーしたファンキーな曲ですけれども、そうした曲はさほど多くはありません。3曲くらいでしょうか。
そうは言っても重くなりすぎないところが、この頃のスティーヴィーの良いところです。上質なポップ・テイストが心地よいです。あまりに心地よくて、逆にこのままでいいのかと自問してしまうほどです。
サウンドは今回も実験があちこちに見られますが、とにかく品のよい素晴らしいサウンドです。絹のような肌触りのサウンドです。聴きなれない音も見事に料理してあります。本当にポップ・ミュージックの教科書です。スティーヴィーはやはり天才です。
Fullfillingness' First Finale / Stevie Wonder (1974 Motown)