宇宙人侵略ものでは一番面白かったのがこの「マーズ・アタック!」でした。私はこういう映画が大好きです。B級映画へのオマージュとなっていますが、製作費等から考えるとこの作品自体は決してB級じゃないわけで、出演者も超豪華です。

 愛嬌のある火星人がとんでもない残虐な奴らだったというところからして素晴らしいです。内面の葛藤などまるでないところが素晴らしい。宇宙人はそうでなくてはいけません。爬虫類的でないところもいいです。

 サウンドトラックはダニー・エルフマンさんの手になるものです。彼はティム・バートン監督とは切っても切れない仲の音楽監督ですが、この作品を手掛ける前には一度コンビを解消しています。仲違い説もありますが、どうなんでしょう。

 ともかく、目出度くコンビは復活して、この作品が完成しました。ダニー自身も大変満足しているということで、まずは一安心です。やはり、相性というものがあるということでしょう。空気のような張り付き方で映像とは切っても切れない密着度を持った作品です。

 ダニーは子どもの頃からSFやファンタジー映画の大ファンだったとのことですが、正規の音楽教育を受けたわけではなく、ロック・バンドのオインゴ・ボインゴで、ヴォーカルを担当していました。

 ティム・バートン監督はこのオインゴ・ボインゴの大ファンだったことから、ダニーに声をかけ、監督のデビュー作「ピーウィーの大冒険」の音楽担当に抜擢しました。ここから二人の関係が始まるわけです。

 しかし、ロック・バンドのボーカルとサントラの制作は随分と距離があります。オーケストレーションなんてどうやって勉強したのでしょうね。本人はかなり苦労したようです。ヒッチコック作品で有名なバーナード・ハーマンやニーノ・ロータが先生だったようですね。

 この作品では、テルミンが活躍しています。50年代、60年代にはテルミンの音は宇宙人やミステリーの定番でした。ここではそれを踏襲して、いかにもそれらしく音が展開していきます。これが典型的です。全体にいい感じでレトロ・フューチャー感覚が漂います。

 自己主張が強くないところがサントラとしての完成度を感じさせます。耳を傾けて鑑賞することももちろんできる質の高さですが、強制的に耳を奪うわけではありません。そこが素敵なところです。

 この映画を見た方は分かると思いますが、火星人を撃退したのは歌の力です。アメリカのカントリー歌手スリム・ホワイトマンさんが歌う「インディアン・ラヴ・コール」が火星人の頭を破裂させるという見事なアイデアです。偉大な歌の力ですね。

 そして最後に「恋はメキメキ」でおなじみの精力絶倫男トム・ジョーンズさんの大ヒット「よくあることさ」で締めます。あまり締めになっていないところも素敵ですね。何だか変な終わり方となるところがカルト映画の終わりに相応しいです。

Mars Attacks! / Danny Elfman (1996 Warner)