反射率とは、天体が恒星からの光を反射するその比率のことです。100%が完全反射体で反射率0.39、39%というのは地球のことです。月が10%強ということですから、結構反射するもんですね。青く光る地球は月よりも明るいようです。

 ヴァンゲリスさんは前作で天国と地獄を描きました。その前は地球でしたから、再び地球へ回帰したわけですが、今回は反射率を持ち出すくらいですから、宇宙から見た地球です。宇宙に飛び出したわけです。

 この頃のヴァンゲリスさんは、ロンドンにスタジオNEMOを建設しており、前作に引き続いてこの作品もそこで制作されました。前作ではジョン・アンダーソンさんやコーラスが参加していましたが、今回はほぼ一人きりです。

 前作がとてもクラシック的な、それもロマン派的な持ち味を持っていたのに対し、今作はよりアグレッシブなプログレッシブ・ロックなスタイルであると思います。今回は曲が細かく分かれていて、全9曲となっているところもロック的です。

 冒頭に置かれた曲「パルスター」がシングル・カットされています。ビートというよりもパルスを際立たせた楽曲で、日本でも後にニュース番組のオープニング・テーマに使用されたほどキャッチーな曲です。

 このシングル・カットも与かったのでしょう、本作品は英国でトップ20に入るヒットとなっています。全編にわたってフックの効いた楽曲が続きますから、このヒットも首肯できるところです。サントラのヒットといった感じですね。

 「炎のランナー」を知ってしまって、過去に遡ってヴァンゲリス像を修正した私から見れば、売れるべくして売れたということになります。しかし、当時は一般に難解なプログレと解されていましたから、私は全くスルーしていました。

 鬼形智さんのライナーによれば、ヴァンゲリスさんはイエスに入らなかった理由として、「イエスの音楽はあまりにも西洋的で好きになれなかった」と語っています。「ギリシャ音楽には東洋やエスニック音楽との共通点がある」とも言っています。

 ギリシャというところが注目です。一般にヨーロッパと言う場合、ギリシャは入るのでしょうか。もちろんかの哲学を生んだ国ですから、精神的にはヨーロッパの支柱のようなものですが、どことなく非ヨーロッパ的な気がします。三重県は近畿か、と同じような問いです。

 地中海にあり、トルコ、アラブとヨーロッパとの接点ですから、さまざまな文化の混在する場所です。ギリシャ出身のヴァンゲリスさんには、東洋的なメロディーも馴染みが深いということなのでしょう。

 この作品は構造がとても西洋的ですけれども、非西洋の匂いが漏れてくるところが楽しいです。壮大なシンセ・サウンドが構築されていますけれども、日本人の私になじみ深い顔がほの見えるんです。ニュー・エイジの特徴でもありますね。

Albedo 0.39 / Vangelis (1976 RCA)