![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140804/22/memeren3/b2/3e/j/t02000200_0200020013024618837.jpg?caw=800)
ヴァンゲリスさんは前作で天国と地獄を描きました。その前は地球でしたから、再び地球へ回帰したわけですが、今回は反射率を持ち出すくらいですから、宇宙から見た地球です。宇宙に飛び出したわけです。
この頃のヴァンゲリスさんは、ロンドンにスタジオNEMOを建設しており、前作に引き続いてこの作品もそこで制作されました。前作ではジョン・アンダーソンさんやコーラスが参加していましたが、今回はほぼ一人きりです。
前作がとてもクラシック的な、それもロマン派的な持ち味を持っていたのに対し、今作はよりアグレッシブなプログレッシブ・ロックなスタイルであると思います。今回は曲が細かく分かれていて、全9曲となっているところもロック的です。
冒頭に置かれた曲「パルスター」がシングル・カットされています。ビートというよりもパルスを際立たせた楽曲で、日本でも後にニュース番組のオープニング・テーマに使用されたほどキャッチーな曲です。
このシングル・カットも与かったのでしょう、本作品は英国でトップ20に入るヒットとなっています。全編にわたってフックの効いた楽曲が続きますから、このヒットも首肯できるところです。サントラのヒットといった感じですね。
「炎のランナー」を知ってしまって、過去に遡ってヴァンゲリス像を修正した私から見れば、売れるべくして売れたということになります。しかし、当時は一般に難解なプログレと解されていましたから、私は全くスルーしていました。
鬼形智さんのライナーによれば、ヴァンゲリスさんはイエスに入らなかった理由として、「イエスの音楽はあまりにも西洋的で好きになれなかった」と語っています。「ギリシャ音楽には東洋やエスニック音楽との共通点がある」とも言っています。
ギリシャというところが注目です。一般にヨーロッパと言う場合、ギリシャは入るのでしょうか。もちろんかの哲学を生んだ国ですから、精神的にはヨーロッパの支柱のようなものですが、どことなく非ヨーロッパ的な気がします。三重県は近畿か、と同じような問いです。
地中海にあり、トルコ、アラブとヨーロッパとの接点ですから、さまざまな文化の混在する場所です。ギリシャ出身のヴァンゲリスさんには、東洋的なメロディーも馴染みが深いということなのでしょう。
この作品は構造がとても西洋的ですけれども、非西洋の匂いが漏れてくるところが楽しいです。壮大なシンセ・サウンドが構築されていますけれども、日本人の私になじみ深い顔がほの見えるんです。ニュー・エイジの特徴でもありますね。
Albedo 0.39 / Vangelis (1976 RCA)