インディーズの黎明期から現在に至るまで第一線で活躍し続けているバンドというと、この突然段ボールと少年ナイフくらいしか思い浮かびません。知らない人は知らないでしょうから、第一線という言い方は微妙ですけれども、コンスタントに話題を提供し続けています。

 公式サイトによれば、突然段ボールは蔦木兄弟を中心に「1977年、美術イベントのパフォーマンス・バンドとして結成」されています。当時はステージに段ボールを投げ込んでおしまいというようなパフォーマンスもあったそうで、見に行った友人が怒っていました。

 彼らがレコード・デビューしたのが1980年のことですから、このアルバムはそれから34年を経て発表されたニュー・アルバムということになります。その間、お兄さんの蔦木栄一さんが亡くなるという悲劇もありましたが、コンスタントな活動は続いていました。頭が下がります。

 私もしばらく彼らの音源を聴いていなかったのですけれども、今作は新聞にもレビューが乗るほど話題になっていたので、食指が動かされました。帯には「まごうかたなき日本ロック界の至宝」と記され、「圧倒的にオリジナルな突段節全開の傑作!」です。

 考えてみれば、お兄さんが亡くなってから聴くのは初めてです。亡くなられたのは2003年ですから、随分長い時間がたったものです。弟の蔦木俊二はもともとギター担当で、お兄さんがボーカル担当でしたから、今では俊二がボーカルも担当しています。

 ここでの突然段ボールは、一言で言えばガレージ・ロック的な世界です。大人のロックという言い方がありますが、文字通り、昔のロック少年が大きくなった風情です。最初に聴いた時は随分普通のロックに聴こえました。

 突段と言えば、シュールでアヴァンギャルドなサウンドが思い浮かぶのですけれども、ここではあまりそういう感想は出てこないと思います。わざと捻ったりしていない、自然な感じのロック・サウンドだと思ったんです。

 しかし、聴きこんでみるとやはり昔と変わらず何か変です。大たいジャケットの写真からして、普通の意味での上手な写真じゃないですよね。裏ジャケはロシア美人のヌードですし、素人の写真っぽいんです。何か変。

 サウンドもわりと普通なんですけれども、楽器のそれぞれがバラバラに動いている感じがします。まとまりがないというわけではありません。しっかり楽曲になっているんですが、どこかちぐはぐ。まるで独立したパーツを組み合わせて音楽を作っているような感覚です。

 それに歌詞。普通は歌には使わない言葉ばかりです。♪自分ら、血ぃ吸うたろか!♪とか、♪川に橋をかけた理由は?♪とか、サビに使いませんよね。深読みしようと思えばいくらでもできる歌詞ばかりです。

 蔦木俊二はあらゆる音楽を聴きこんでいるそうですが、それら全部を血肉に変えた上で、一旦全てを忘れて、再構築しているような音楽になっています。何を言っているのか分からなくなってきましたが、緊張と緩和を絶妙に配した魅力的な作品であることは確かです。

Edited on 2018/10/12

Cho-Sensitive / Totsuzen Danball (2014 P-Vine)