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シュバリエ・ブラザーズは1982年にロンドンで誕生したバンドです。彼らが採用した音楽は、ジャズ、しかもこの頃には顧みられることもなかったジャイヴ・ジャズなどと言われる際物視されたジャズです。
この作品に賛辞を捧げているスリム・ゲイラードやルイ・ジョーダン、さらにはキャブ・キャロウェイと言った芸人ミュージシャンによる踊るためのジャズ、エンタテインメント全開のジャズです。モダン・ジャズの求道者的雰囲気とは対極にあるジャズです。
ちょうどこの頃、ミュージック・マガジンの姉妹誌レコード・コレクターズ誌が創刊されました。同誌は今ではロックばかりですが、創刊当初はこうしたジャズなど、世界の大衆音楽を扱う面白い雑誌でした。
そのレココレ誌で上に挙げたミュージシャンの特集が編まれたりしている中で、ロンドンから飛び出した、彼らの音楽を再現したバンドとしてシュバリエ・ブラザーズが大きく取り上げられていました。当初は昔のバンドだと思っていたので、何だか訳が分からないまま、レコードを買った覚えがあります。
5人組の彼らは、往年のフランス寄席芸人の名前を頂いたモーリス・シュヴァリエ、マン・オブ・スティールのクラーク・ケント、ジェラートにボージョレと、それぞれふざけた芸名をつけていて、いかにもジャイヴな芸人を装っています。
モーリスはビッグ・バンドの経験もパンク・ミュージシャンの経験もあるギタリストだということで、当時、メンバーはみんな若かった。そんな若者たちが、レトロなジャンプ・アンド・ジャイヴなジャズを演奏するということで全く異色のバンドでありました。
このデビュー作品では、オリジナル曲もありますが、ルイ・ジョーダンやスリム・ゲイラードなど往年のスターのレパートリーを嬉々としてやっています。これが実に楽しい。フォー・ビートではありますが、疾走するエネルギーは満点です。
頭を抱えて聴くジャズでは全くなく、踊らずには聴けないエンタテインメント感満載のジャズです。50年代のロックン・ロールに感じる、ちょっとレトロなんだけれども、とても楽しいパーティー音楽感が素晴らしいです。
目から鱗、瓢箪から駒のアイデアの勝利です。この前にジョー・ジャクソンによる「ジャンピン・ジャイヴ」なる作品がありましたから、全く彼らが初めてというわけではありません。また、大江田信さんのライナーにある通り、ストレイ・キャッツによるロックン・ロール・リバイバルも彼らの活躍の素地となったと思われます。
野暮はやめましょう。レトロな大衆音楽をよみがえらせた功績は大きい彼らですが、とにかく楽しい。それしかありません。久しぶりに聴いて惚れ直しました。
Live and Jumping / The Chevalier Brothers (1985 Disques Cheval)