$あれも聴きたいこれも聴きたい LP時代は面白ジャケットや芸術ジャケットを集めた画集をよく見かけたものです。特に洋書ですね。ほぼどの書店の洋書コーナーにも置いてありましたから、結構売れたんでしょう。私もよく立ち読みしました。高くて買えなかったので。

 フラッシュのアルバムはどれもその画集の常連さんでした。フラッシュにはちらリズムという意味合いもあるということで、デビュー作はパンチラ、二作目は胸チラでございます。エロ・ジャケットの常連さんだったんです。まるで萌えませんけどね。萌えポイントは人によって違うものです。

 そういうわけでこのアルバムとは古い付き合いのような気がしています。なので、紙ジャケCDが発売された時に、昔持っていたような気がして、つい買ってしまいました。ところが、実際に音を聴いたのはこの紙ジャケCDが初めてです。

 フラッシュには、イエスを脱退したギターのピーター・バンクスがメンバーとして参加していますし、同じくイエス組のトニー・ケイもこのアルバムにはゲストで参加しています。編成はイエスと同じ。ボーカルのコリン・カーターはハイトーンというわけで、どうしてもイエスと比べられてしまいます。

 実は、私、そんな情報も知りませんでした。イエスは聴いていましたけれども、その二人はあまりに影が薄かったですから、ほとんど興味がなかったんです。このバンドへの興味はジャケットのみでした。

 それで、耳を傾けてみますと、イエスよりもイエスらしい、軽やかなプログレ路線はなかなか素敵でした。初期のイエスの感じです。フォーク的だったイエスの頃です。イエスが大作志向になっていく中で、袂を分かった二人ですから当然と言えば当然です。

 決して大ヒットしそうではありませんが、当時のプログレに耳を傾けていた人にとっては愛おしいアルバムです。初めて聴いたのにとても懐かしい気がしました。ほとんど話したことがなかった中学校の同級生に久しぶりに再会して意気投合した気分です。

 ネットを泳いでおりますと、愛に溢れたブログ記事がたくさん見つかります。大たい私と同じような年代の方が多いです。その気持ちはよく分かります。超一流にはなれなかったけれども、当時のシーンで頑張っていたバンドに自分の人生を重ねてしまいます。

 そんなわけで、同窓会的なアルバムです。ピーター・バンクスさんは今年の3月に65歳の若さで亡くなってしまいました。ますます身につまされます。
 
 昔を偲んで杯を傾けながら聴きたいアルバムです。

Flash / Flash (1972 Sovereign)