$あれも聴きたいこれも聴きたい 映画「レース」は大ヒットしましたので、今年続編が作られました。大変よく似たストーリーでとても面白かったです。どんな映画かと言いますと、どんでん返しに次ぐどんでん返しのジェット・コースター・ムービーです。

 亡くなった彼女の妹、というのは嘘、何てことは最初から知ってた、ということはお見通しだった、と逆転に逆転を重ねていくわけです。こういう話だと辻褄合わせが大変なはずですが、そこにはあまりこだわらず、人気俳優をたくさん集めて、多少の無理は承知でとにかく面白さを優先させたお話は大変面白いです。

 この初代「レース」は音楽もかなりヒットしました。おなじみプリタムの傑作のひとつでしょう。ここにご紹介するのは2枚組のサントラです。1枚はDJスケツによるリミックスで、これはこれでいいのですが、もう一枚も2曲がリミックスなので、結局、オリジナルは6曲だけです。

 中でも注目は「ペヘリ・ナザル・メン」です。訳すと「一目見た時に」でしょうか。これをパキスタンの歌手アティフ・アスラムが歌っています。彼はイスラム圏ではかなりのスター歌手で、確かこれがボリウッド映画に進出し始めた頃だと思います。初の大ヒットではないでしょうか。

 すでにアイドル的人気を誇っていた歌手を起用したということですから、通常のプレイバック・シンガーとは少し違っていて、たとえばご紹介するビデオには歌う彼の姿が映し出されています。彼はギタリストでもありますが、残念ながらそれは映っていません。爽やかな歌声で、私は大好きです。

 もう一つの注目は「ザラ・ザラ・タッチ・ミー」です。歌っているのはモナリ・タクールという人で、彼女はインドのタレント・ハント番組インディアン・アイドル2の出身です。彼女は今や大成功したプレイバック・シンガーの一人ですが、この曲で一躍有名になりました。実質的なデビュー作ですね。リズミカルで初々しい彼女の歌声が多くの人を魅了したのでした。

 しかし、残念ながら、この2曲は、韓国と台湾の楽曲をそのままパクったと言われていて、実際に訴訟にまで発展したようです。せっかくいい曲なのに、残念ですね。きちんと断っておけばいいものを。

 注目ポイントに戻りますと、アパッチ・インディアンの参加が特筆されます。骨のある元気なラップを聴かせてくれています。してみると、いろいろと工夫があるということですね。映画が映画だけに、音楽の方もいろんな手を使ってみましたということでしょう。

 サウンドでは、ギターの活躍が目立ったり、ロック調だったり、しょうもないディスコ調だったりといつものプリタム節が極まった感じがします。見事にインド人のツボにはまったということで、映画の公開から1年、2年は本当によく流れてきたものです。

 けばい作りのサウンドが効果的なサウンドトラックになっていて、映画との相乗効果で大ヒットにつながりました。耳にこびりついて離れない類の音楽です。私は好きです。

Race / Pritam (2008 Tips)