$あれも聴きたいこれも聴きたい ニューオーリンズでは、誰も彼もがミュージシャンだとバニー・マシューズさんがライナーに書いています。音楽の都は数あれども、ニューオーリンズの知名度が一番高いのではないでしょうか。逆に言えば、ニューオーリンズと言えば音楽しか思い浮かびません。あっ、ハリケーンがありましたね。

 バニーさんによれば、ミュージシャンの中でもより真面目な人はファンク・ミュージシャンだということになります。そんな真面目な人の代表格がこのミーターズです。ネヴィル・ブラザーズの長兄アート・ネヴィルを中心に結成された4人組は最高のニューオーリンズ・ファンク・バンドです。

 ミーターズの結成は67年。アートがベースのジョージ・ポーター・ジュニア、ドラムのジョセフ・「ジガブー」・モデリスト、ギターのレオ・ノセンテリをリクルートして始めたバンドです。ニューオーリンズのR&Bシーンの顔役アラン・トゥーサンのハウス・バンドだったことがきっかけで、ロバート・パーマーやパティ・ラヴェル、ドクター・ジョンなどのビッグネームのバックで演奏するなどして人気を獲得しました。

 ポール・マッカートニーのスタジオ・バンドも務めたと言いますし、ローリング・ストーンズのツアー・サポートもしています。何だかとても幅が広いですね。ファンクはすべてを抱擁するのでしょう。

 このアルバムは5枚目のスタジオ・アルバムで、傑作として知られています。彼らの代表作と言っていいでしょう。シングル・カットされた「ピープル・セイ」や「ヘイ・ポッキー・アウェイ」は彼らの代表曲です。

 とにかくファンクなリズムがすごいです。聴いていると、どこで息をしていいのかよく分からなくなります。こちらの呼吸のリズムが乱れるんですよね。そこが凄い。独特のリズムに聞きほれてしまいます。

 このドラムとベースとギターの組み合わせは、自然に出てきたものではなく、彼らの発明になるものだとYMOの方々が絶賛しています。ピーター・バラカンさんもジガブーのドラムにぶっとんだと語っています(コモンズ・スコラ「ドラム&ベース」)。

 彼らの解説によると、このドラムは「セカンド・ライン」というのだそうです。「お葬式のマーチング・バンドがファースト・ラインになっていて、その周りで踊ったり何かを叩いたりしているのがセカンド・ライン」です。「ブラス・バンドが演奏する『ファースト・ライン』に対し、『セカンド・ライン』はシンコペイションを加えたリズムを打つのが慣例だった」ということで、独特のシンコペイションが特徴なんですね。

 うーん。これは凄い。そんな彼らの不滅のファンキネスは、ノセンテリによれば「魔法としかいいようがない」ものです。「アートはカントリー&ウェスタンが好きだったし、ジョージはポップスが好きだった。ジグはR&Bばかり聴いていたし、オレは基本的にはジャズ畑出身なんだ。だから、あれはマジックだったんだよ」。

 11分に及ぶ「イット・エイント・ノー・ユーズ」なんて聴いていると、頭が変になりそうです。強烈。素晴らしい音楽です。

Rejuvenation / The Meters (1974 Reprise)