![$あれも聴きたいこれも聴きたい](https://stat.ameba.jp/user_images/20130817/16/memeren3/05/1b/j/t02000200_0200020012651129692.jpg?caw=800)
トニー・ウィリアムスは18歳でマイルス・デイヴィスのバンドに加わり、ロン・カーターとハービー・ハンコックと組んだリズム・セクションはしばしば最強のユニットだと言われるほどのドラマーです。モダン・ジャズのドラミングを変えた男とされています。
そんなトニーが作ったグループがライフタイムで、もともとはギターのジョン・マクラフリンとオルガンのラリー・ヤングとのトリオでした。そこに何と元クリームのジャック・ブルースが加わって、ロックよりのサウンドを展開し、フュージョンのパイオニアとなりました。
ライフタイムはころころとメンバーも変わりますから、アルバムごとに随分と表情が違うということですが、この「エゴ」は3作目で、すでに魂のギタリスト、ジョン・マクラフリンはいません。ジャック・ブルースも1曲でボーカルをとるのみです。
ここでのライフタイムは6人組で、ベースには盟友ロン・カーターが入り、ラリーのオルガン、テッド・ダンバーのギターと、トリプル・パーカッションです。見事に我が儘な構成です。
このアルバムは、収録されている楽曲のすべてがウィリアムスによって書かれていまして、これは初めてのことです。そして、かなりの曲で自らボーカルを披露しています。彼のボーカルは悪評紛々でして、何とか良いところを探そうとファンの間で懸命の努力が続いています。
サウンドはとても不思議な感触です。全曲作曲していますし、統一感はあるのですが、それぞれの楽曲が一般的な楽曲としてのまとまりを欠いているように思えます。それゆえに、全曲が溶け合っているような気さえします。何か変なんですよね。しっくりこなくて不安になります。
悪名高いボーカルを含むポップな曲もあれば、ドラム・ソロやパーカッション・アンサンブルだけの曲もありますし、大音量で真剣に耳を傾けると、随分力の入ったアルバムであるようにも思えます。一方で、なんとなく聴いていると、10代前半から活躍していたトニーさんが、ドラム以外のこともしてみたいんだと我が儘言っているアルバムのようにも思えます。
かなり自由度の高いアルバムなんですかね。かっちりまとめようという意思はないのかもしれません。録音風景はどんな感じだったんでしょうか。メンバー間のやりとりを見てみたいものです。
Ego / The Tony Williams Lifetime (1971 Polydor)