$あれも聴きたいこれも聴きたい 今日は在東京のインド人に招かれてお宅にお邪魔してきました。大勢のインド人と一緒においしいインド家庭料理を堪能するというインド・ナイトでした。ちなみにここ数日の東京は暑すぎるとぼやいていました。本当に暑いです。

 ご紹介するのはボリウッド映画のサントラ盤です。われわれが普通にサントラと聞いてイメージするサントラ盤です。新曲もあるものの、いろんな人のヒット曲が集められていて、ときどきつなぎ的にいかにも映画らしい曲が入る。

 インドでは新作映画にはほぼ必ずバックグラウンド・スコアの音楽監督の他に音楽監督が任命されて、その監督が主題歌ならびに劇中歌を制作するスタイルです。しかし、このサントラ盤はそうではない。異端です。2005年の作品ですが、これ以降もこのスタイルのものはほとんど見かけません。

 なお異例なことに多くの楽曲が外国で活躍するアーティストの手になるものです。一番目立つのは以前紹介したトリックベイビーで、彼らのファースト・アルバムから3曲が収められています。おまけに彼らがリミックスした曲が1曲、彼らの曲をリミックスした曲が1曲、計5曲。

 さらに注目されるのは、アラーシュです。アラーシュはスウェーデンで活躍するイラン人アーティスト。ここに収められた楽曲「ボロ・ボロ」はボリウッド風に作られた曲ですが、スウェーデンではヒット・チャートで1位になっています。アラーシュ本人とスウェーデンの音楽プロデューサーのロバート・ウルマンの手になる曲なのにボリウッド調です。ビデオで歌っているのがアラーシュです。

 このコンビはさらに「セイ・ナ・セイ・ナ」という曲も共作しています。こちらはイラン系デンマーク人アニーラ・ミルザが歌っています。彼女はデンマークで成功したトイ・ボックスというバンドにいた女性です。ソロでもそこそこ成功した人で、現在は英国在住とのことです。ちょっと蓮っ葉な感じが可愛いです。

 ペルシャとインド、それにバイキング。何とも意表をついた組み合わせです。ポップの世界は本当に奥が深いです。しかもアラーシュはペルシャ語で歌っているようです。言語の広がりも凄いものです。

 残りの楽曲はサミールディンと言う音楽監督の手になるものが大半です。中にはボリウッド往年のヒット曲のリミックスが出てきます。インドのディスコでDJが好むスタイルです。そして、唯一と言ってよいボーカル入り新曲は人気音楽監督ヴィシャール&シェカールの手になる「ライト・ヒア・ライト・ナウ」で、主演のアビシェーク・バッチャンと私の大好きな歌姫スニディ・チョウハンのデュエットです。

 そういうわけで、全編ボリウッド的ではあるのですが、不思議な感触を持っています。やはりボリウッド・ネイティブではない人々によるオマージュ的な作風なんですね。しかもとても真面目に取り組んでいる。そして普通にポップ最前線。その意味ではボリウッド入門には最適かもしれません。

 映画はインドの石原裕次郎と呼んでよいと思われるアミター・バッチャンの息子で、ハリウッドでも活躍する美人女優アイシュワラ・ライの旦那さんのアビシェーク・バッチャンと、私の一押し女優プリヤンカ・チョプラによる作品ですが、見ていないので何とも言えません。悪しからず。

Bluffmaster (OST) (2005 Saregama)