$あれも聴きたいこれも聴きたい このところ、インドの映画を日本で上映する興行が進んでいます。この映画「タイガー 伝説のスパイ」も日本で封切られています。

 この映画はボリウッド史上興行成績第二位という超ウルトラ特大ヒットになりました。本格的なスパイもの、娯楽超大作となっています。最近やたらと調子のいいスーパースターのサルマン・カーンとインドを代表する美人女優カトリーナ・カイフの二人がインドとパキスタンのスパイに扮して大活躍します。

 残念ながら映画館には行きそびれましたので、DVDで鑑賞いたしました。監督はカビール・カーンという新進気鋭の人で、寡作なものですから、最新作以外はすべて見ました。社会派の人です。今回はユーモアにも溢れていて面白かったです。ちょっとどん臭いアクションも素敵でした。

 音楽はボリウッドの若手のホープ、ソヘイル・センが担当しています。彼はまだ20代の若手でして、「ワッツ・ユア・ラーシー」という映画音楽で一躍注目を集めました。この作品は当初ボリウッド一の人気音楽家プリタム(注:ARラフマーンの間違いでした。訂正します。)に白羽の矢が立ちましたが、彼が断わったことからソヘイルにお鉢がまわってきたということです。

 ソヘイルはこの大ヒット作の音楽担当を見事にやりきりました。ただ、彼だけでは心配だったんでしょう。一曲人気コンビであるサジッド・ワジッドの曲が使われています。屈辱じゃないでしょうかね。

 ソヘイルの曲は実質3曲です。今回はキューバが舞台ということで、「ラアパタ」はもろラテンのリズムが使われています。カリブの音楽とインド音楽は親和性が高いのでとてもよくマッチしています。

 さらに今回はアイルランドも舞台になっていますから、「バンジャアラ」ではバグパイプが使われています。うーん。スコットランドではないんですからねえ。若干アイリッシュ・トラッドっぽい感じもしますからよしとしましょう。基本バングラないい曲です。歌はスクビンダー・シン、こういう曲が得意です。

 ロマンチック・チューンは「サイヤアラ」です。インド映画お約束の二人のねっとりした絡みが素敵です。モヒット・チョーハンの憂いを帯びた歌唱が冴えています。意外に品のある曲で私は好きです。

 さて、「ラアパタ」の女声シンガーはパラク・ムッチャールという人です。彼女は92年生まれのまだ若い女性ですが、4歳の時から歌を始めて、7歳の時にはチャリティーを始めます。以降、弟ともどもインド中で貧しい子どものために歌い続けているとても立派な人です。

 この作品は彼女のボリウッドでの初の大ヒットとなりました。まだ実質3曲目で大ヒット。さすがに肝が座っています。彼女のこれからの活躍に期待したいものです。

 映画もそこそこ面白いですし、楽曲の数々もしっかりと作り込まれていて、ボリウッドのさらなる飛躍が期待できる作品です。

Ek Tha Tiger / Sohail Sen (2012 Yash Raj Films)