![$あれも聴きたいこれも聴きたい](https://stat.ameba.jp/user_images/20130511/11/memeren3/fd/b1/j/t02000184_0200018412534363483.jpg?caw=800)
ただ、インドのポピュラー音楽では映画音楽が圧倒的に強いので、映画賞であるフィルムフェア・アウォードなどの音楽賞の方がよほど人気は高いという不思議な現象が起きています。アカデミー賞の音楽部門がグラミー賞より権威があるわけです。
ともあれ、2013年のロック・アウォードでベスト・アルバム賞に輝いたのが、このアードヴァイタの「サイレント・シー」です。彼らは首都ニュー・デリーをベースとするバンドで、デビュー作は2009年に発表されています。これは彼らの二作目にあたります。
彼らは、XTCなどを手掛けたジョン・レッキーがインドのバンドを発掘するブリティッシュ・カウンセルのプロジェクトで、スワラトマなどとともに選ばれていもいます。まさにインドのロック界を代表するバンドなわけですね。
バンド名は、インド哲学の不二一元論を表す言葉です。宇宙は一つの実体からなっているとする梵我一如の考え方です。「ア」は非、「ドヴァイタ」は二。二に非ず。すべては一つという思想です。その名の通り、あらゆる要素を一つに溶け合わせた音楽を目指しています。
バンドは8人組で、ドラムにギター、ベース、キーボードというロックの王道楽器群に加えて、インドの古典歌唱、弦楽器サーランギ、タブラなどのパーカッションが入ります。インド的な要素を存分にちりばめたロックを演奏するバンドです。
ゆったりしたリズムに乗せて紡がれる歌の数々は、とても大陸的な雰囲気を持っています。大らかなロック。しかし、サザン・ロックとかそういうアメリカンなロックとは全く違いますし、ブリティッシュ・ハード・ロックとも全く違います。最近のダンスな雰囲気もありません。
では何かというと、70年代のユーロ・プログレ、それもPFMあたりのイタリアンに近いものを感じます。以前、ラビの記事を書いた際に、彼の音楽をイタリアの至宝マウロ・パガーニがプロデュースしていることを指摘しました。そのことを思い出しました。
そんなことを考えながら聴いていますと、サーランギはまるでブズーキやバイオリンのように響いてきます。それにリズムやコーラスがまるでイタリアンです。決してブルースではなくて、とても端正なロックに仕上がっています。プログレです。
インドの古典音楽では通奏低音がほぼ必ず鳴っています。このアードヴァイタもロックではありますが、通奏低音は欠かせません。そこがとてもプログレな感じを連れてきます。しかもダンス・ビートの影響を受けていないので、とても70年代的です。
プログレ・ファンの皆さん、こんなところにプログレは残っていますよ。ぜひ聴いてみてください。
The Silent Sea / Advaita (2012 Virgin)