$あれも聴きたいこれも聴きたい-Enigma 昔、聴いた曲が何かの拍子に突然頭の中に甦ってしばらく離れなくなることがあります。先日、犬と散歩をしている時に、なぜだか突然、エニグマの「リターン・トゥー・イノセンス」が頭の中で鳴りだして止まらなくなりました。

 そこで、荒ぶる魂を鎮めるためにCDを買ってきました。当時、イギリスで流行っていたので、何度も聞いたのですが、考えてみればCDを買うのはこれが初めてです。アルバムを通して聴いたこともあったかなかったかという状態なのに、なんで突然の一人リバイバルなんでしょう。不思議です。

 エニグマは、ルーマニア生まれのマイケル・クレトゥのプロジェクトです。活動拠点はドイツです。マイケルは57年生まれですから私よりも3つ上です。フランクフルト音楽院を抜群の成績で卒業した音楽エリートですが、70年代後半からポップス界でセッション・ミュージシャンとして活動を始めます。

 そしてアラベスクです。同じくドイツ発ですが、竹の子族の支持を受けて日本で大ヒットした何とも胡散臭いプロジェクトでした。「ハロー・ミスター・モンキー」はヒットしましたね。日本だけですが。そのアラベスクのツアーにマイケルが参加したことをきっかけにボーカルのサンディーと知り合い、後に結婚します。サンディーはエニグマの重要なメンバーになりました。

 アラベスクという名前が出てきた時点でええっと思った人も多いことでしょう。エニグマ本体にもどこか胡散臭い雰囲気が漂っているのは、そのことも影響しているのかもしれません。

 そうなんです。何か胡散臭いんですよね。このプロジェクト。ほかの要因としては、サンプリング事件があります。このアルバムの中の大ヒット曲「リターン・トゥー・イノセンス」には、台湾アミ族の歌い手ディファン(郭英男)の「老人飲酒歌」がサンプリングされています。しかし、無断使用だったためにエニグマはディファンさんに訴えられました。

 この事件は、和解に至ったばかりか、両者の親交が深まるという心温まる話に終わるのですが、残念ながら何となく胡散臭さだけが残ってしまいました。

 否定的なことばかり書いてすいません。ほめましょう。

 エニグマはグレゴリオ聖歌をサンプリングして、ダンスビートと結びつけるという誰も思いつかなかった手法でデビューから大ヒットを飛ばしました。チャート・アクションはそれほどでもありませんでしたが、300週近くも全米トップ200に入るというロング・セラーとなりました。

 このアルバムは、彼らのセカンド・アルバムです。ここではグレゴリオ聖歌ではなくて、エスニックな音楽をサンプリングして使用しています。大ヒットとなって私の頭の中に刻まれた「リターン・トゥー・イノセンス」はディファンさんのボーカルが素晴らしい名曲です。

 ほかにも映画マトリックスで使われた「アイズ・オブ・トゥルース」や、シャロン・ストーン主演の「シルバー」の主題歌「エイジ・オブ・ロンリネス」など有名曲が含まれています。

 サンプリングが多用されているようですが、クレジットはあまりなく、詮索好きなネットからの情報では、モンゴルやネイティブ・アメリカンの音源などに加えて、ジェネシスやヴァンゲリスもサンプリングされている模様です。同じ系統のヴァンゲリスはいかんでしょう。

 中にはハード・ロックばりばりなギターも入っているのですが、サウンドは、ニュー・エイジやヒーリング音楽に分類されることが多いです。ブックレットの内容や歌詞などはいかにもニュー・エイジ然としているので、やはりそっち系なんでしょうね。

 うーん。買っといてなんですが、私には縁遠い音楽でした。ファンの皆様すみません。

The Cross Of Changes / Enigma (1993)