三枚組超大作というのはクラシックでもなかなかないんじゃないでしょうか。音だけで2時間半も注意力を持続させるのは並大抵のことではありません。作る方も半端ない集中力が必要でしょう。
ポピュラー音楽の世界では、殿下がCD3枚組を出していますね。Jポップ界では安全地帯ですか。いずれも頭の中にメロディーが始終流れている人たちです。
「サンディニスタ!」は前作から1年とおかずに出された三枚組超大作です。CDでは二枚に収まってしまいますが、ここは144分間、各面に律儀に6曲ずつ配置された3枚組6面の作品として鑑賞するのが正しいというものです。
何でもブルース・スプリングスティーンへのライバル心から企画したということです。思いつきはそうだったかもしれませんね。ただ、やっているうちにどんどん楽しくなってきたんじゃないかと思います。遊び心満載です。今、現在、このアルバムを企画したとすると、恐らく1枚はリミックス集になったでしょう。実際、同じ曲のダブ・バージョンやらが何曲も入っていますからね。
パンクの英雄クラッシュは、「ロンドン・コーリング」で従来のパンク・フォーマットから大きく踏み出しました。そして、この作品ではその路線が極まっています。スカやロックン・ロール、ブルースにラテンとありとあらゆる音楽要素をごたまぜにしていますし、曲の形もサウンドも自由度がきわめて高いです。
特にレゲエというかダブの手法は全編にわたっています。これには、ジャマイカのサウンド・プロデューサー、マイキー・ドレッドの力が大きいと思います。彼は、全編にわたって音作りに参加しており、プロデューサーに近い立場だったようですが、ここでは「バージョン・ミックス」とクレジットされています。
ジャマイカでも録音されていますが、マイキーによれば、とにかくスタジオに人が集まり過ぎて、ドラマーが腕を上げるのも難しくなってきたため、ニューヨークにわたることになったということです。ルーツ・レゲエを取り込んだ彼らのサウンドは本場でも好評だったようですね。
この作品は3枚組ではありますが、イギリスでは1枚の値段で発売されました。私も輸入盤で買ったのでとても安かった記憶があります。しかし、日本盤は多少安めでしたが、2枚組以上の値段でしたし、CD化以降はクラッシュの心意気は有耶無耶にされてしまいました。残念です。
冒頭の「7人の偉人」から気合が入りまくっています。残念なことがもう一つ、この曲は原題が「荒野の七人」の英語名なんですが、邦題をつける時に気が付かなかったんでしょうねえ。この曲は、シングル・ヒットもしました。ラップですから、チャート・インした白人ラップとしてはほぼ最初じゃないでしょうか。
その後、とにかくバラエティーに富んでいながらも、びしっとしたビートで全編がしまっていて、統一感が溢れています。ごった煮の魅力とか、実験作をとにかく詰め込んだとか言われますが、アルバムとしてのカラーは見事に決まっています。
まあ確かに、今回はゲストがてんこ盛りで、中ではタイモン・ドッグが曲を書いて、バイオリンを弾きまくり、さらにリード・ボーカルをとるという掟破りの曲もありますし、キーボードのミッキー・ギャラガーのまだ小さな子供たちがボーカルをとっている曲まであります。ミック・ジョーンズと恋人だったエレン・フォーリーとのデュエットもありと、何でも詰め込んだ感じはありますけれどもね。
ということで、このアルバムはよくビートルズのホワイト・アルバムに比較されます。まあ分かりますが、やはりこちらは統一感がありますからね。特に、フロントマンの二人の陰に隠れてあまり目立ちませんが、ポール・シムノンのベースとトッパー・ヒードンのドラムスが素晴らしくて、ファンキーだし、レゲエの本質に迫っています。マイキーとのコラボでその魅力に磨きがかかりました。これが一本芯を入れているんでしょう。
アルバムのテーマは、79年のニカラグアでのサンディニスタ革命です。ジョー・ストラマーの政治的な立場表明は見事に今日にも通用するものでした。それをこれだけの音楽の洪水の中で主張するのは並大抵のことではありません。
後から聞くところによると、このアルバムの制作時には、バンドの内情はどんどんややこしくなっていったそうです。それだからこそのこの充実ぶりなんでしょう。頂点から転げ落ちそうな爛熟の魅力でしょう。
私はこのアルバムが大好きです。今でもクラッシュの最高傑作だと思いますし、当時のニュー・ウェーブのアルバムの中でも確実にトップ10に入る名作だと思っています。後のワールド・ミュージックの再発見や、クラブ系の音楽の出現を予言した純度の高い名作です。
Sandinista! / The Clash (1980)
ポピュラー音楽の世界では、殿下がCD3枚組を出していますね。Jポップ界では安全地帯ですか。いずれも頭の中にメロディーが始終流れている人たちです。
「サンディニスタ!」は前作から1年とおかずに出された三枚組超大作です。CDでは二枚に収まってしまいますが、ここは144分間、各面に律儀に6曲ずつ配置された3枚組6面の作品として鑑賞するのが正しいというものです。
何でもブルース・スプリングスティーンへのライバル心から企画したということです。思いつきはそうだったかもしれませんね。ただ、やっているうちにどんどん楽しくなってきたんじゃないかと思います。遊び心満載です。今、現在、このアルバムを企画したとすると、恐らく1枚はリミックス集になったでしょう。実際、同じ曲のダブ・バージョンやらが何曲も入っていますからね。
パンクの英雄クラッシュは、「ロンドン・コーリング」で従来のパンク・フォーマットから大きく踏み出しました。そして、この作品ではその路線が極まっています。スカやロックン・ロール、ブルースにラテンとありとあらゆる音楽要素をごたまぜにしていますし、曲の形もサウンドも自由度がきわめて高いです。
特にレゲエというかダブの手法は全編にわたっています。これには、ジャマイカのサウンド・プロデューサー、マイキー・ドレッドの力が大きいと思います。彼は、全編にわたって音作りに参加しており、プロデューサーに近い立場だったようですが、ここでは「バージョン・ミックス」とクレジットされています。
ジャマイカでも録音されていますが、マイキーによれば、とにかくスタジオに人が集まり過ぎて、ドラマーが腕を上げるのも難しくなってきたため、ニューヨークにわたることになったということです。ルーツ・レゲエを取り込んだ彼らのサウンドは本場でも好評だったようですね。
この作品は3枚組ではありますが、イギリスでは1枚の値段で発売されました。私も輸入盤で買ったのでとても安かった記憶があります。しかし、日本盤は多少安めでしたが、2枚組以上の値段でしたし、CD化以降はクラッシュの心意気は有耶無耶にされてしまいました。残念です。
冒頭の「7人の偉人」から気合が入りまくっています。残念なことがもう一つ、この曲は原題が「荒野の七人」の英語名なんですが、邦題をつける時に気が付かなかったんでしょうねえ。この曲は、シングル・ヒットもしました。ラップですから、チャート・インした白人ラップとしてはほぼ最初じゃないでしょうか。
その後、とにかくバラエティーに富んでいながらも、びしっとしたビートで全編がしまっていて、統一感が溢れています。ごった煮の魅力とか、実験作をとにかく詰め込んだとか言われますが、アルバムとしてのカラーは見事に決まっています。
まあ確かに、今回はゲストがてんこ盛りで、中ではタイモン・ドッグが曲を書いて、バイオリンを弾きまくり、さらにリード・ボーカルをとるという掟破りの曲もありますし、キーボードのミッキー・ギャラガーのまだ小さな子供たちがボーカルをとっている曲まであります。ミック・ジョーンズと恋人だったエレン・フォーリーとのデュエットもありと、何でも詰め込んだ感じはありますけれどもね。
ということで、このアルバムはよくビートルズのホワイト・アルバムに比較されます。まあ分かりますが、やはりこちらは統一感がありますからね。特に、フロントマンの二人の陰に隠れてあまり目立ちませんが、ポール・シムノンのベースとトッパー・ヒードンのドラムスが素晴らしくて、ファンキーだし、レゲエの本質に迫っています。マイキーとのコラボでその魅力に磨きがかかりました。これが一本芯を入れているんでしょう。
アルバムのテーマは、79年のニカラグアでのサンディニスタ革命です。ジョー・ストラマーの政治的な立場表明は見事に今日にも通用するものでした。それをこれだけの音楽の洪水の中で主張するのは並大抵のことではありません。
後から聞くところによると、このアルバムの制作時には、バンドの内情はどんどんややこしくなっていったそうです。それだからこそのこの充実ぶりなんでしょう。頂点から転げ落ちそうな爛熟の魅力でしょう。
私はこのアルバムが大好きです。今でもクラッシュの最高傑作だと思いますし、当時のニュー・ウェーブのアルバムの中でも確実にトップ10に入る名作だと思っています。後のワールド・ミュージックの再発見や、クラブ系の音楽の出現を予言した純度の高い名作です。
Sandinista! / The Clash (1980)