$あれも聴きたいこれも聴きたい-Kings Of Leon 3人兄弟と従兄からなるアメリカのバンドです。兄弟によるバンドというのはよくありますが、3人以上となると珍しいです。ジャクソン5やフィンガー5、あるいはノーランズやオズモンズ、どれもこれもファミリーな感じになりますね。こういう本格派ロック・バンドではこのキングス・オブ・レオンくらいでしょうか。

 この作品は、彼らの5枚目のアルバムです。グラミー賞のベスト・ロック・アルバムにノミネートされたくらいですから、評論家筋の受けもいいですし、セールスの方も快調です。英国では1位、米国でも2位となっていて、世界中で人気のあるバンドです。

 一言で言えば、渋い。ジャケットの裏面には、同じ色調で、海辺でたき火を囲む4人のシルエットが写っています。そういう写真を見ると、私のようなオールド・ファンは反射的に米国を代表するロック・バンド、ザ・バンドの「南十字星」を思い浮かべることになっています。

 単なる第一印象に過ぎないわけですが、このアルバムを聴きこめば聴きこむほど、その印象に深みが増していきます。もちろん、ザ・バンドをまねしているわけではありませんが、ザ・バンドの仲間であることは間違いありません。

 ザ・バンドを思い浮かべるというのは褒め言葉です。決して派手ではありませんが、アメリカの大衆音楽のルーツをしっかり踏まえたコクのあるいぶし銀のロックが聞こえてきて嬉しい、ということを表現する時に、私たちの世代は、ついザ・バンドを持ち出してしまうんです。

 彼らはオクラホマ出身ですが、お父さんが宣教師だったことからアメリカ南部を旅する生活を送っていたそうです。父親が宣教師を辞めて、両親が離婚するとナッシュビルに移り住んだ兄弟は音楽に目覚めます。禁欲の後のロック、のめり込み方も凄かったことでしょう。クラッシュにも入れ込んだといいます。

 そういう生活を送っていると兄弟の結束は固そうですね。なるほど。

 彼らの音楽スタイルは、ブルースやカントリーの影響の濃いサザン・ロック・スタイルですが、当然、現代の音ですから、グランジやオルタナティブの匂いもします。とにかく、どこからどう切ってみてもアメリカの音。それも大西部や南部の香りが色濃く立ち上ってきます。

 何のギミックもなく、正面から堂々とアメリカの正統派ロックに取り組んだ姿勢には頭が下がります。それも、極めて質が高い。楽曲もイケてます。渋いのですが、何度も聴きたくなります。滋味あふれるサウンドでいながら、切れ味が鋭い。いいアルバムです。

Come Around Sundown / Kings Of Leon (2010)