$あれも聴きたいこれも聴きたい-パスピエ 素敵なジャケットです。ブックレット全体に淡い青色のスク水少女が赤いストローを持っていろんなことをしています。ボーカルで作詞を手掛けている大胡田なつきさんが描くイラストはなかなか味があります。PVで堪能してください。

 パスピエは2009年に結成された若いバンドで、インディーズでの作品がロングセラーを記録して、今年念願のメジャー・デビューを果たしました。目標にしていたそうですから、何はともあれ、よかったですね。おめでとうございます。

 彼らは相対性理論のフォロワーと言われることが多いようです。相対性理論は神聖かまってちゃんと並ぶ若手カリスマ・バンドになっているようですね。そんなカリスマに比肩され、さらには今最強の女性、きゃりーぱみゅぱみゅもヘビロテだということですから、要するに話題のバンドです。

 この作品のキャッチフレーズは「21世紀流超高性能個人電脳破壊行壊曲」というものです。これでは、何だかよく分かりませんので、巷のキャッチフレーズを探してみますと、「相対性理論×YUKI」というのがありました。こちらだと音がイメージしやすいです。YUKIはジュディ・マリのYUKIです。ロリ声っていうことですね。

 パスピエの自分たちでも言っている通り、80年代のニュー・ウェイブには大きな影響を受けている様子が見られます。テクノ歌謡風なポップスです。ただ、ボーカルはロリ声ですが、不思議ちゃん系ではないので、構えずに聴けます。

 比較的ストレートなポップスが詰まっていて、バンド演奏もしっかりしているので、なかなか楽しむことができます。歌詞もストレートなものが多くて、鼻についたり、邪魔になったりすることもありません。優等生なんですね。

 彼らを紹介する公式サイトには、「若いのに卓越した音楽理論とテクニック」と書いてあります。何だろうと思ったんですが、要するにリーダーの成田ハネダが芸大を出てるということを別の言い方で言っただけのようです。

 彼らは、全くの無名、正体不明、プロモーションなしの状態から、SNSなどを通じてじわじわと人気が広がっていったジャスミン革命的なバンドです。正体不明は選び取られた戦略ではなく、単にだれも紹介してくれなかっただけのようで、そんなところはこだわりがなくていいですね。

 こういうポップスは嫌いではないのですが、あまりに達者すぎて、かつ優等生的なので、心配になってしまいます。若気の至り的な破天荒さが垣間見えるともっといいと思うんですけどね。

 端正なポップスで人気を博しそうなバンドです。今から注目しておいて損はないのではないでしょうか。なんて、予言が当たると鼻が高いのですが、さて、どんなもんでしょうか。
 
パスピエ / ONOMIMONO (2012)