$あれも聴きたいこれも聴きたい-Chaka Demus & Pliers
 あまりにべたな話ではありますが、夏はやっぱりレゲエです。暑くなると自然にレゲエのリズムが恋しくなります。いつの頃からそのように洗脳されてきているのか分かりませんが、パブロフの犬のように条件反射してしまいます。そんな時はこの一枚がおすすめです。

 本作品はチャカ・デマス&プライヤーズの大ヒット・アルバム「ツイスト&シャウト」です。原題は英国盤発表時までの最大のヒット・シングル曲「ティーズ・ミー」でしたが、日本盤発表時には「ツイスト&シャウト」がそれを凌駕していたためにそちらが邦題に選ばれました。

 このアルバムにはシングル・ヒット曲が満載です。これらのサウンドがヒットしていた当時、私は英国に住んでいたので、その熱を生で体験しました。もともとパンク~ニューウェイヴの背景にレゲエの太い流れがあったとはいえ、やはり少し驚きではありました。

 ボブ・マーリー以来のレゲエは、1990年代前半にはヒップホップなどを取り入れて、ダンスホール・レゲエなどに進化していました。このあたりのサウンドは英国では普通に市民権を得て、大きな人気を博すようになってはいました。そこへこの大ヒットです。

 本作品は結果的に英国のアルバム・チャートで1位を獲得しましたし、3曲のシングル曲がトップ5ヒットとなっています。テレビのチャート番組などは毎週彼らの曲を流していましたし、ロンドンの街中にはチャカ・デマス&プライヤーズの曲が溢れていました。

 チャカ・デマスは本名をジョン・テイラーというDJです。早くからジャマイカの音楽界で活躍していましたが、1990年代に入ってシンガーとしてキャリアを積んでいたプライヤーズことエバートン・ボナーと出会ってコンビを組みます。これが大躍進につながります。

 ダンスホール・レゲエは結構過激な音楽でもあるわけですが、そんな中で人を食ったようなちょっと間が抜けた感じがする緩いところがこのデュオの魅力です。典型的には代表曲「バム・バム」のビートに表れています。全体を貫く脱力感が暑さに作用してくれます。

 バム・バム・ビートは、レゲエのアルバムにはどこにでも顔をだすスライ・ダンバーとロビー・シェークスピアのリズム隊がたたき出す極端にシンプルなリズムです。同じビートを活用した「マーダー・シー・ロート」はまず米国でもラップ・チャートで5位に入るヒットになっています。

 英国では「ティーズ・ミー」が大ヒットを記録します。続いたのはカーティス・メイフィールドのカバー「シー・ドント・レット・ノーバディ」。さらにビートルズのバージョンで有名な「ツイスト&シャウト」が続いてとうとう英国のシングル・チャートを制します。

 この一連のヒットのおかげで比較的長期にわたって英国の音楽界を席巻することとなり、本アルバムもついに1位となったのでした。チャカ・デマスとプライヤーズの二人の掛け合いの妙は本当に素晴らしく、スライ&ロビーのタイトなリズムとともに人々を沼に沈めたのでした。

 同時期にはシャギーやシャバ・ランクスなど一連のレゲエ・アーティストが英国のシングル・チャートを賑わせており、ダンスホール・レゲエは大ブームになっていたのでした。しかし、一時の熱狂が去った後のデュオの活躍はぱっとしません。最高のデュオなのに残念です。

Tease Me / Chaka Demus & Pliers (1993 Mango)

*2012年8月2日の記事を書き直しました。



Songs:
01. Tease Me
02. She Don't Let Nobody
03. Nuh Betta Nuh Deh
04. Bam Bam
05. Friday Evening
06. Let's Make It Tonight
07. One Nation Under A Groove
08. Tracy
09. Sunshine Day
10. Murder She Wrote
11. Roadrunner
12. I Wanna Be Your Man
13. Twist And Shout
14. Gal Wine

Personnel:
Chaka Demus
Pliers
***
Robbie Shakespeare : bass
Sly Dunbar : drums
Lloyd (Gitsy) Willis : guitar
Robbie Lyn : keyboards
Brian & Tony Gold, Chevelle Franklyn : chorus