あれも聴きたいこれも聴きたい-Charles Dutoit 一週間に一回くらいはクラシックを聴くことにしようと思います。まあ宣言するほどのことはないのですが、なかなか楽しく聴けるようになってきました。音楽的に全く成熟しないのですが。そこが私の取り柄でしょうか。

 この作品にはとてもフランスを感じます。しかし、ラベルはお父さんがスイス人でお母さんはバスク人、指揮のデュトワはスイス人、オーケストラはカナダのモントリオール交響楽団と微妙にフランスの血が薄い。その方がフランスらしさを発揮できるのでしょうね。ありがちな話です。

 この作品は、名門レーベルであるデッカの誇る名録音の一つとして名高い作品です。ボートラで超有名曲「ボレロ」が入っていますが、何といいますか、録音に品があるんですよね。この録音がフランス感の大きな要素なのだと思います。とても繊細でまろみを帯びていて上品な録音です。

 ラベルはとてもダンディーな作曲家で、「管弦楽の魔術師」と呼ばれています。一方で、デュトワも「音の魔術師」と呼ばれているそうです。魔術師と魔術師が重なりあって共鳴しています。案の定、ラベルはデュトワの十八番だそうです。

 ここに収められた楽曲は、まずはマザー・グースを題材にした「マ・メール・ロア」。子どもに贈った楽曲だけになかなか楽しげにいろんな音が鳴ります。かわいらしくて繊細で、何とも言えない美しい演奏ですね。

 ついで有名な「亡き王女のためのパヴァーヌ」。ピアノ曲は初期の傑作とされていますが、管弦楽の方も小品ながら品があって素敵です。とても有名な曲で、ベラスケスの「王女マルガリータ」を見て着想したという話です。今で言えば、何でしょう。芦田愛菜ちゃんを見て書いたような感じでしょうか。ところで、パヴァーヌというのは舞踏の一種ですが、何やら説明を読んでもよく分かりません。

 そして「クープランの墓」。昔、音大に通っていた友人がピアノを弾いたのを聴いておっ魂消たことがあります。そのド派手な演奏は、素人のピアノ上手とは明らかに世界が違うことを見せつけるかのようでした。いやあ素晴らしかった。管弦楽曲の方も最後に盛り上がりますが、私はピアノがガンガン鳴る方が好きです。

 そして、「高雅で感傷的なワルツ」。さすがに音楽知識のない私でもワルツは分かります。宮廷を思わせますね。最近、「クレーブの奥方」を読んでフランス王宮の宮廷にとてつもなく憧れておりまして、そんな心根にぴったり来ます。時代は随分下っているのですが。

 最後にボートラで「ボレロ」が入っています。「ボレロ」はどんどん終盤に向かって盛り上がっていきますが、他の楽曲もほとんど皆そうです。最後に派手に盛り上げて大団円を迎える。これはラベルの魔術なんでしょうか。人生観が現れていそうですね。天性のエンターテイナーぶりを遺憾なく発揮しています。

 デュトワという人はかなりの日本びいきだったということです。大河ドラマの主題曲でも棒を振ったそうですから相当なものですね。ラベルも印象派に分類されることがありますから、日本趣味もあったのでしょうか。全編フランスでありながら、何となく和のテイストも感じられる気がします。

 全体に典雅でクールな演奏です。「ボレロ」なしのオリジナルの構成は本当に素晴らしいと思います。曲の並びも考えられていて、微妙に気分を変えながら一気に聴き通すことができます。心が豊かになりますね。

Charles Dutoit, Orchestre symphonique de Montreal / Maurice Ravel : Ma Mere l'Oye, Pavane pour une infante defunte, Le Tombeau de Couperin, Valses Nobles et Sentimentales (1985)