あれも聴きたいこれも聴きたい-Zappa12
 私はフランク・ザッパ先生のファンとしては人後に落ちないつもりです。先生のCDはほぼすべて持っていますし、先生のことを20世紀最大の音楽家だと思っています。ロック作品だけではなく、現代音楽的な作品も大好きです。私にとっては神様です。

 そこまで言っておいてから一言申し上げますと、先生の映画だけは理解不能です。どこが面白いのかよく分かりません。神様の作品なので、理解しなければならないと強迫観念にさいなまれてきましたが、そろそろ楽になりたいです。なんじゃ、こりゃあー。

 「200モーテルズ」はザッパ先生初のメジャー映画作品で、チャップリンが作った大会社ユナイテッド・アーティストから配給されました。アカデミー賞にノミネートされたこともある俳優セオドア・ビケルの他、ロック界からはリンゴ・スターやキース・ムーンが出演しています。

 映画の内容はロック・ミュージシャンのツアー中の生活ということだと映画評には書かれています。確かに私も映画を見たのですが、あらすじすら誰かの解説から引っ張ってこないとご紹介できない。筋立てなどよく分からないシュールなドキュメンタリー調の映画です。

 私は結構シュールな映画も好きなので、筋立てが分からなくても映画鑑賞には支障ないと思うのですが、ザッパ先生のこの映画は、先生と同世代でかつ米国文化圏に生まれ育った人にしか面白さが分からないのではないかと思います。日本の漫才やコントのように。

 本作品はそんな映画のサウンドトラックです。実際には映画に使われた音楽とはかなり異同があり、音楽作品としての完成度を追求した作品ですから、単体の音楽作品として十分楽しめます。先生の本格的なオーケストラ作品としては初めての作品でもあります。

 先生は14歳の頃からオーケストラのための作曲を続けてきました。本作品の前にはマザーズとズービン・メータ指揮のロサンゼルス交響楽団の共演が実現しています。本作品では、その役割をイギリスのロイヤル・フィルが果たしています。実に本格的です。

 一方、マザーズはここでは、フロー&エディー、イアン・アンダーウッド、エインズレー・ダンバー、ジョージ・デュークが中心です。ベースのジェフ・シモンズは撮影途中で怒って辞めてしまったため、ノエル・レディングがオーディションされましたが、結局、不発に終わりました。

 万策尽きて、次に通った人をベースに起用することとなり、めでたくリンゴ・スターの運転手だったマーティン・リッカートが採用されました。奇跡的にベースの弾ける人が通りかかったのだそうです。マザーズのラインナップとしては大変ユニークです。

 サントラらしく、堂々たるオーケストラ曲とフロー&エディーが大活躍する歌謡漫才風ロック曲が同居しており、音楽作品としては大そう聴きごたえのある重厚な傑作だといえます。現代音楽系の大名曲「ストリクトイー・ジェンティール」もここが初出です。

 本作品はザッパ先生の手に権利がなかなか戻らなかったために、CDで再発されたのは既存カタログの中では一番最後になりました。そのため、私も映画を見たのが先でした。その印象から少々敬遠気味でしたが、どうしてどうしてタートル・マザーズの傑作でした。

Frank Zappa's 200 Motels featuring The Mothers Of Invention and The Royal Philharmonic Orchestra (1971 United Artists) #013

*2012年4月29日の記事を書き直しました。



Tracks:
(disc one)
01. Semi-Fraudulent / Direct-From-Hollywood Overture
02. Mystery Roach
03. Dance Of The Rock & Roll Interviewers
04. This Town Is A Sealed Tuna Sandwich (prologue)
05. Tuna Fish Promenade
06. Dance Of The Just Plain Folks
07. This Town Is A Sealed Tuna Sandwich (reprise)
08. The Sealed Tuna Bolero
09. Lonesome cowboy Burt
10. Touring Can Make You Crazy
11. Would You Like A Snack?
12. Redneck Eats
13. Centerville
14. She Painted Up Her Face
15. Janet's Big Dance Number
16. Half A Dozen Provocative Squats
17. Mysterioso
18. Shove It Right In
19. Lucy's Seduction Of A Bored Violinist & Postlude
(disc two)
09. I'm Stealing The Towels
02. Dental Hygiene Dilemma
03. Does This Kind Of Life Look Interesting To You?
04. Daddy, Daddy, Daddy
05. Penis Dimension
06. What Will This Evening Bring Me This Morning
07. A Nun Suit Painted On Some Old Boxes
08. Magic Fingers
09. Motorhead's Midnight Ranch
10. Dew On The Newts We Got
11. The Lad Searches The Night For His Newts
12. The Girl Wants To Fix Him Some Broth
13. The Girl's Dream
14. Little Green Scratchy Sweaters & Courduroy Ponce
15. Strictly Genteel (the finale)
(bonus)
200 Motels promotional radio spots:
16. Cut 1 "Coming Soon!..."
17. Cut 2 "The Wide Screen Erupts..."
18. Cut 3 "Coming Soon!..."
19. Cut 4 "Frank Zappa's 200 Motels..."
20. Magic Fingers (single edit)

Personnel:
Frank Zappa : guitar, bass
***
Mark Volman : vocal, special material
Howard Kaylan : vocal, special material
Ian Underwood : keyboards, winds
Aynsley Dunbar : drums
George Duke : keyborads, trombone
Martin Lickert : bass
Jimmy Carl Black : vocal on "Lonesome Cowboy Burt"
Ruth Underwood : orchestra drum set
Jim Pons : voice of the "Bad Conscience"
The Royal Philharmonic Orchestra conducted by Elgar Howarth
The Top Score Singers conducted by David Van Asch
Classical Guitar Ensemble supervised by John Williams
Theodore Bikel : narrator