あれも聴きたいこれも聴きたい-Karl Boem 一緒に楽しくクラシック入門の時間がやってまいりました。今日はブルックナーです。高校の文化祭で化粧をしてキッスをやっていた友人が「交響曲ならブルックナーだな」と言っていたのが、頭の片隅に頑固に居座っていたので、紙ジャケでクラシック名盤が再発された時に、買っておいたものです。今日初めて聴きました。

 ブルックナーは後期ロマン派に分類され、ベートーベンとマーラーをつなぐ存在として語られます。随分な言われようですね。かわいそうに。どこか大作曲家に一つ足らない扱いです。

 いろいろと調べていると、ブルックナーという人はかなり変な人のようですね。大たいこの交響曲は、ワーグナーを訪ねて行って献呈したというではありませんか。褒められたのがうれしくて名前も「ワーグナー」とつけています。何やらアイドル歌手が竹内まりやに褒められて喜んでいるような風情です。大作曲家らしくありません。

 しかも、訪ねて行ったのに乞食と間違われたというから愉快です。そして、夫妻の家でビールを飲みすぎて酔っぱらうという舞い上がりぶり。面白いものです。若い女性に求婚しまくったけれども、結局結婚しなかったというのもなんだか分かる気がします。

 それに作品に何回も手を入れる性格なんですね。この交響曲第3番は、実際には5番目の交響曲ですが、後で番号の入り繰りがあって3番になりました。その上、2回にわたる大幅改定があり、さらに出版も何種類かあるという執拗さ。このベーム盤は第三稿をレオポルト・ノヴァークと言う人が校閲した「ノヴァーク版」なんだそうです。

 彼の交響曲の特徴は「ブルックナー開始」だの、「ブルックナー休止」だの、「ブルックナー・リズム」などの名前で呼ばれています。体操競技のようですね。ロックン・ロール的でもあります。まだ入門者なので、それが何だか言い当てられるほどではありませんが、かっこいいと思います。

 この曲は1877年に自らの指揮で初演されましたが、大コケだったようで、客がほとんど帰ってしまったということです。当時の観客はシビアです。帰っちゃうんですよ。私にはそんな勇気はありません。真剣勝負の素晴らしい時代だったんですね。

 曲を聴いていますと、全体にふにゃふにゃした軟体動物のような感じがいいです。質実剛健と言うよりも豪華絢爛。とくに第三楽章は舞曲になっていて、シングル・ヒットが狙えそうなキャッチーなメロディーが華やかに鳴らされます。7分弱ですから、本当にシングル・カットしてはどうでしょう。

 ベームの指揮は、音楽を自ら奏でさせると言われます。そうなんでしょうね。ユーチューブにどんぴしゃの演奏がなかったので、ティントナーの演奏をご紹介しておきますが、それと比べるとよりしなやかな感じがして、私はベームの方が好きです。

 なかなか楽しい楽曲です。金管楽器が大活躍しますし、出だしでドーンと決めて、また最後に向けて盛り上がる。大そう分かりやすい、ちょっと下世話な感じがいいです。

Karl Böhm, Vienna Philharmonic Orchestra / Bruckner Symphony No.3 In D Minor (1971)